誰ひとり取り残さない。読書バリアフリーを推進する、【オーテピア高知声と点字の図書館】へ
一人ひとりに寄り添った読書のかたちを提案
「声と点字の図書館」で取り扱う図書には、本を点字に転換した点字図書と、本を読み上げてカセットやCD、USBに収録した録音図書、パソコンやタブレットで音声を聞きながら文字や画像を見ることができるマルチメディアデイジー図書などがある。触ってわかる資料として、音声解説付きの3Dプリンタ造形モデルも貸し出している。なお、これらの利用対象者はプリント・ディスアビリティのある人に限定されている。 「声と点字の図書館」の利用者の中で大部分を占めるのが、録音図書ユーザーだ。ベストセラー小説をはじめ、ノンフィクションや専門書など、利用できるデータは10万タイトル以上。主査の伊藤嘉高さんは、録音図書のニーズが高まっている背景について次のように述べる。 「電子書籍の読み上げ機能やオーディオブックなど、読書バリアフリーのリソースはここ数年で格段に増えました。しかし、プリント・ディスアビリティのある方の中には、パソコン操作がスムーズにできず、それらを選んで購入するところまでたどり着けない方も多いです。当館では、そういった本を選ぶのが難しい方々から、録音図書の問い合わせをいただいています」 2023年度の「声と点字の図書館」の利用登録者数は828人。館長の西岡和美さんは、オーテピア開館以降、視覚障害以外のプリント・ディスアビリティのある人の利用も少しずつ増えてきていると話す。 「視覚障害のある方に限らず、病気や高齢などさまざまな理由で活字の読書がむずかしい方も、当館の利用の対象になります。点字図書や録音図書を貸し出しする際、障害者手帳をお持ちの場合は提示をお願いしていますが、必ずしも手帳や病院の診断書がなければ利用できないわけではありません。どんな読みづらさがあるのか、職員が一人ひとりの困りごとを聞き取りながら、その方に合ったバリアフリー図書の選択肢をご案内しています」
無料郵送貸出から対面音訳まで、誰もが読書を楽しめる充実のサービス
遠方や障害などの理由で、来館できない人はどうすればいいのか。「声と点字の図書館」では電話でのリクエストを受け付け、点字図書や録音図書の無料郵送貸出を行っている。繰り返し利用している人の場合は、職員が好みを把握し、おすすめの作品を送ることもある。 録音図書やマルチメディアデイジー図書を再生する機器やタブレットも、貸し出しの対象だ。「声と点字の図書館」では約300台の再生機を備え、来館できない人には無料で郵送する。 「プレクストークという録音図書再生機がありますが、これは視覚障害手帳1、2級の方であれば、日常生活用具の給付対象になっています。しかしそれ以外の方が使うためには、機器を全額負担で購入しなければならないので、どうしても利用のハードルが高くなります。当館では、視覚障害手帳1、2級以外の方にも録音図書を聞いてほしいとの思いから、オーテピアのリニューアルオープンに伴い、積極的に再生機の貸し出しを始めました」(伊藤さん) 貸し出し中の機器が故障した場合は、利用者の自宅まで取り換えに行ったり、初回なら機器の操作方法を説明しに行ったりすることもある。職員が高知県内全域に訪問し、サポートしている。 利用者が希望する図書や資料をボランティアスタッフが読み上げる、無料の対面音訳サービスもある。「高知図書館」との共同のサービスで、1コマ2時間以内、事前予約制。電話やスカイプでの音訳にも対応する。ほかにも、読書にまつわる困りごとの相談や、福祉機器を通じた視覚障害者支援など、提供するサービスは“図書館”の枠を超えており、じつに手厚く、幅広い。