誰ひとり取り残さない。読書バリアフリーを推進する、【オーテピア高知声と点字の図書館】へ
障害や高齢、病気などのさまざまな理由で読書が困難な人は、日本にどのくらいいるだろうか。厚生労働省の調査によると、視覚障害のある人は約30万人*。本を持ち、ページをめくるのが難しい上肢障害のある人は約50万人。ほかにも眼球使用困難症の人や寝たきりの人、知的障害のある人、文字の読み書きに困難のある学習障害や認知障害の人などを含めると、数百万人にもおよぶと推定される。 【写真】読書が困難な人の支援に力を入れている「オーテピア高知声と点字の図書館」 読書は人生を豊かにするうえで欠かせないものだが、活字媒体にアクセスできない、もしくはアクセスすることを諦めている「プリント・ディスアビリティ」のある人たちが大勢いる。2019年には、国内で読書バリアフリー法が施行された。すべての人が自由に読書ができる環境を整備していこうという機運が高まる中、積極的な取り組みを期待されているのが、地域住民にもっとも近い存在である公共図書館だ。SPUR.JPでは、公共図書館と連携して読書が困難な人の支援に力を入れている「オーテピア高知声と点字の図書館」(以下、「声と点字の図書館」)への訪問取材を行った。ひとりひとりのニーズに合った読書のかたちには、どのようなものがあるのか。誰も取り残さない読書バリアフリーサービスのあり方について考えてみたい。 *厚生労働省 平成28年生活のしづらさなどに関する調査
障害の有無にかかわらず、読書が困難な人は誰でも利用できる施設
高知市の中心街にある図書館複合施設「オーテピア」は、3つの施設からなる。2階と3階は、中四国最大級の蔵書数を誇る「オーテピア高知図書館(以下、高知図書館)」、5階にはプラネタリウムを備えた「高知みらい科学館」、そして1階エントランスホールのすぐ奥にあるのが、バリアフリー図書を豊富にそろえる「声と点字の図書館」だ。高知県民を支える情報拠点として、2018年の開館以来500万人を超える人びとが訪れる。 「声と点字の図書館」は、「図書館」と名前がついているが、「図書館法」に基づく公共図書館や学校図書館とは異なり、「身体障害者福祉法」に基づく視覚障害者情報提供施設として位置づけられる福祉のための施設である。 前身は「高知点字図書館」で、高知市民図書館に併設されていた。その名称から点字利用者のための施設というイメージが強く、来館するのはごく一部の決まった人だけだった。そこで、点字を読めない人やロービジョン(見えにくさがあり、日常生活に支障をきたしている状態)の人、視覚障害以外のプリント・ディスアビリティのある人たちも利用できることを知ってもらうべく、オーテピアの開館に合わせて現在の名前に。誰もが気軽に入れるようなオープンスペースに生まれ変わった。 入口の間口を大きく取った明るく開放的な閲覧スペースには、点字や録音図書をはじめとするさまざまなバリアフリー図書や、視覚障害者向けの福祉機器などが展示され、誰でも自由に体験することができる。