「野球・冬リーグ」にプロ球団が選手派遣する真因…劇的に進化したジャパンウィンターリーグの中身
こういう形で地元の支援が盛り上がっている背景には、当然ながらここ2年間のJWLの活動が地元沖縄に経済的恩恵をもたらしていることがある。株式会社りゅうぎん総合研究所は2023年のJWLの「経済効果」について、宿泊業の1.34億円を筆頭に、飲食サービス業、対個人サービス、対事業サービスなど5.46億円になったと発表した。 この発表は次のように締めくくっている。これが地元沖縄県の「期待感」ということになるだろう。
「当リーグは野球界のプラットフォームとして世界から多くの人々を呼び込む可能性のあるコンテンツである。参加者数や観客数が増加するにつれ、経済効果もさらに拡大することが見込まれ、その実現のために行政や観光事業者などと連携した広報や集客活動の強化が必要となるであろう。今後も野球界や沖縄観光の発展に向けたジャパンウィンターリーグの動向に注目したい」 3年前、ある野球人から紹介されて出会ったときの鷲崎氏は、30歳。スタートアップ企業を立ち上げたばかりの「徒手空拳の若者」という感じだった。わずか3年で地域やプロ野球、メディア、ナショナルクライアントを巻き込んだ事業に成長させるとは、驚くばかりだ。
■外国人選手の応募が増えている理由 今年はすでに150人以上から参加申し込みがあるという。まだ最終的な数字は確定していないが、特に外国人選手の応募が増えている。 筆者は、とくにヨーロッパ圏の選手はNPBやMLBへのコネクションが少ないから、それを求めてJWLに来るのかと思ったが、それだけではないという。 ヨーロッパでマイナースポーツの「野球」に打ち込む選手にとって、WBCで優勝した日本野球は「憧れ」だ。プロになるとか金儲けをするだけでなく純粋に「本場の野球に触れて、学びたい」という気持ちでやってくる選手もいるのだ。
日本なら20代後半になって野球を続けていると、就職に影響しそうだが、人材の流動性が高い欧米ではそういう経験がキャリアに悪い影響を与えることは少ない。 NPBの「12球団合同トライアウト」は、戦力外になった選手がプレーをアピールして他球団への入団を目指すものだ。しかし、投手は3~4人、打者も数人を相手にプレーするだけでは、実力の見極めは難しい。形式的になっているとのことで、今季限りで廃止の意向とされる。
JWLは1カ月弱にわたってリーグ戦が行われる。私見だがレベルも相当上がっているので、NPBがこれを「トライアウト」に活用することも考えられるのではないか。今年は、広島を戦力外になった内間拓馬と、坂田怜のJWL参加が決まった。 カリフォルニアのウィンターリーグに参加したことがきっかけで、将来展望が開けた鷲崎氏は語る。 「今年は、全体的にレベルが高くなりましたが、日本人選手にもぜひ参加してほしいと思います。世界中からやってくる野球選手、そしてプロ野球選手と一緒にプレーをして、自分のレベルを知るとともに、野球をする楽しさを実感してほしいと思いますね」
広尾 晃 :ライター