【追悼 上田稔夫さん】 怒涛の業態開発&超高効率経営で紡いだ「コムサ神話」
もう一つは翌年の02年11月8日に札幌の丸井今井本店南館の地下1~地上3階までの4層に出店した「シアターコムサ」(同1130坪、約3700㎡)だ。「コムサイズム」を軸としたメガストアの「コムサストア」とは異なり、「コムサデモード」や「アルチザン」を軸とした高感度な都市型メガストアで、まさに日本の美意識を感じさせるVMD(ビジュアル・マーチャンダイジングは圧巻だった。
SPA化で高収益、1998年に売上高1135億円・経常利益率13%を達成
業績面では、1998年10月期が最高のパフォーマンスだったと記憶している。のちにグループ売上高2000億円を達成することになるが、98年10月期の売上高は1135億円(前期比11.4%増)で経常利益が147億円(同32.8%増)、経常利益率はなんと13.0%。粗利益率は64.8%、プロパー消化率が75%、商品回転数が年間24回と驚異的な数字を叩き出した。
上田社長は当時、ファッション小売業のビジネスで大切なのは、第一に「商品」、第二に「店舗」、第三が「在庫コントロール」だと語っていた。素材、デザイン、価格などトータルで競争力のある商品を創り上げるために、高いクオリティでハイスピードできるように国内生産、とくに国内縫製にこだわっていた(当時の海外生産比率は2割程度に抑制していた)。また、デザインに関しては、イタリアのデザイン事務所と契約していた他、優秀なデザイナーからのデザイン提供なども受けており、中にはラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドでクリエイティブディレクターやアシスタントなどを務めるようなバリバリの現役もいたと聞く。
日本の美意識を服と店舗、VMD、おもてなしで表現
店舗では基本ショップマニュアル「店憲法」を制定し、笑顔、挨拶、おたたみを徹底。ディスプレーだけでなく、本格的なVMDで劇場型の店舗を開発。おもてなし力と商品力と店舗の魅力を融合し、「感動企業」を目指していた。さらに在庫コントロールを徹底し、高プロパー消化率と、一点も残さない完全消化率100%を追求。在庫コントロールの精度が狂うと、アウトレットはかたくなに拒んだ。