大江千里、愛車歴の続きを語る! ゴルフⅡと共に所有した意外な1台とは
サーブ900でベイブリッジを渡って
「ラジオの『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)でパーソナリティをやっていたとき、番組のライターの人が緑のサーブ900カブリオレに乗っていて、カッコいいなあって思っていたんです。それで89年だったかな、新車で黒いサーブ900を買っちゃって。人生初の新車だったし、もう“清水の舞台から”というやつですよ(笑)」 スウェーデンの自動車メーカーであるサーブは、航空機メーカーの自動車部門として47年に設立された。67年に発売した中型セダン「99」が高い安全性と個性的なデザインでヒット作となり、900はその後を継ぐモデルとして78年に登場した。 日本では80年代後半、そのクラシカルなスタイリングが人気を博し、なかでもカブリオレは“お洒落なガイシャ”として、マスコミやファッション関係など、いわゆる“カタカナ職業”の人たちによく売れたという。ちなみにサーブ900カブリオレは、村上春樹の小説『ドライブ・マイ・カー』に主人公の愛車として登場することでも知られる(映画ではクーペのサーブ900が使われた)。 大江さんの楽曲には、サーブでのドライブから着想を得た曲もある。サーブ900を購入した翌年にリリースしたアルバム『APOLLO』に収録されている『BAY BOAT STORY』がそれだ。「コンビナートから 橋をくぐるように 滑りだす」という一節は、ベイブリッジを渡り、横浜へとドライブしたときの情景が歌われているという。 「ドライブは、行き先を決めないで走ることもありましたね。あるとき高速に乗って、山梨あたりまで来たときに、“このへんで降りてみようか”と、適当に高速を降り、知らない道をどんどん走っていったら、山のなかのすごいところに入っちゃった。竹林の中で止めると、エンジン音だけがプルプルプル……と、響いていたのが印象的で。そのときの情景は『竹林をぬけて』って曲になっていますね」 話を伺っていると、クルマへの愛情、クルマとのエピソードが溢れんばかりだ。アメリカにわたり17年、クルマなし生活を送っているという大江さんに「またクルマに乗りたいと思いませんか?」と、訊いてみた。 「毎日、思っています。いつも“もし僕がクルマを買ったら……”と、妄想しては、“駐車場はどうしよう”とか“朝、クルマを動かすのに起きられるかな”とか(笑)。街なかで、思いきり音楽を鳴らしながら走っているクルマを見ると、たまらなくなるんですよね。」 ニューヨークの街を、軽快なジャズを鳴らしながら、旧いビートルで駆けぬける大江さんの姿が目に浮かんでくるようだ。