“守破離”の精神で進化する桃谷順天館 140年の思いと新たな挑戦
主軸のスキンケア好調で
売上高10%増
WWD:直近の商況は?
桃谷:2023年は、グループ会社であるセルフ販売の明色化粧品とOEM /ODMのコスメテックジャパンが順調に伸長し、グループ全体の売上高は前年比10%増で着地した。明色化粧品では、昨年9月に発売した毛穴専門スキンケアシリーズ“ケアナボーテ”のピュアビタミンCを配合した美容液“VC15特濃美容液”(30mL、2530円)が非常に売れた。スキンケアの高まりを受け、処方が難しいと言われるピュアビタミンCを15%と高濃度で配合しながらも他ブランドよりも低価格で実現した同商品は、インフルエンサーのオーガニック投稿で人気に火がつき、継続して売れている。このほかにも、高機能エイジングケアシリーズ“メディショット”のナイアシンアミドを15%高配合した“メディショット NA15リンクル濃美容液”(30mL、1650円)も好調に伸びている。一方で、明色化粧品は豊富な商品をラインアップしているが、原料高や輸送コストなどの問題をクリアできる商品群に絞ろうと考えている。利益を出しながら研究開発に投資し、次のステージに向けて推し進める。
WWD:「人々のお悩みを解決したい」という創業者の桃谷政次郎氏の思いは変わらず継承されている。
桃谷:創業のきっかけとなったニキビを防ぐ“美顔水”(1885年~)は今もロングセラー商品として親しまれているが、これを販売しているだけでいいというわけではない。時代の変化に伴い、お客さまが求めることも変わってくる。お客さまのニーズに寄り添い、積極的に応えるというのが私の思いでもある。新しいことにはどんどん挑戦していく。
WWD:来年は創業140周年を迎える。今後の展望は。
桃谷:創業者の思いでもある「目の前で悩んでいる方のお悩みを解決する」という原点は守っていくが、「守破離」という言葉があるように“破る”ことも大切だ。私が社長に就いてから30年経つが、私自身が作ってきたものが呪縛になっているのではと感じることがある。ルールや時代に合わせて改革してきたそれらが年輪のように溜まり、1人歩きしているものがある。守破離のごとく、創業者の思いを体現するために何が必要かと原点に立ち返りながら、われわれ流の美のあり方を自分たちで考えた、新しい側面を持つ桃谷順天館へと成長させていきたい。