掃除機で吸うのは効果ナシ 医師が解説「餅が詰まったとき」の応急処置 2年間で高齢者661人が亡くなる、生存率は17%
具体的には、患者をうしろから抱え、みぞおちにこぶしを当てたら内側かつ上方向に強く押し上げる。 この2つの方法を救急隊が来るまで交互に行う。 やり方については、YouTubeの「東京消防庁公式チャンネル」の動画がわかりやすいので、ご覧いただきたい。また、掃除機による吸引は効果がないとされているので、やらないでほしい。 背部叩打法やハイムリック法で窒息が解除されなければ、胸部圧迫など応急処置をしながら、病院に搬送されるのを待つ。胸部圧迫の方法も東京消防庁公式チャンネルの動画を参考にするといいだろう。
■救急搬送しても手遅れのことが多く 病院での詳しい処置はあとで紹介するが、簡単に説明するとこうだ。 まず、気道を展開(気道を確保して呼吸を助けるために、頭部を後ろに反らせて、下あごを上げた状態にして気道の通りをよくすること)して、目で見ながら鉗子(かんし:ものをつかむときに使う医療器具)を用いて、餅を除去する。 慣れた医師なら1分以内で処置は完了するが、病院に到着したときにはすでに手遅れのことが多く、このような処置をしても、患者の回復はあまり期待できない。
以上が、餅による窒息対策の概要だ。 実は、筆者も餅を詰まらせた患者を診たことがある。初めて経験した患者は、70代の男性だった。昔の話になるが、その光景が今も忘れられない。 筆者は医学部を卒業したあと、2年目の研修を大宮赤十字病院(現:さいたま赤十字病院)で行った。当時も今も、埼玉県は医師不足だ。医師は忙しく、当直をしていると毎晩10人以上患者がやってくる。救急車で運び込まれる患者もいる。一睡もできないことも珍しくない。
一方で、年末年始の病院はがらんとして、普段の病院とはまったく違う。入院患者の多くは外泊して、家族とともに新年を迎えるからだ。とにかく患者さんが少ないので、医師や看護師ものんびりとした気分を味わえる。筆者は、この雰囲気が好きだった。 正月の当直を迎えるにあたり、先輩医師から必ず指導されることがある。それは餅による窒息への対応だ。迅速な処置が求められるからだ。 元日の夜8時頃、救急隊から「餅による窒息で心肺停止です」と連絡があった。筆者はどう対応してよいかわからず、一緒に当直していた1年先輩の医師を呼んだ。