〈終身雇用に年功序列!?〉世界的には、かなり特殊…いまなお大企業に根強く残る「日本的経営」の実情【経済評論家が解説】
年功序列賃金も緩んでいるが、本質は健在
日本では学校のクラブ活動などでも「先輩は偉いから先輩を敬うべき」といった文化がありますが、企業内でも先輩を敬うという文化があります。そして、給料も先輩のほうが高いのです。長く企業に勤めている人を給与面等で優遇するという制度を年功序列賃金制と呼びます。 高度成長期には企業が成長し、毎年大勢の新入社員が入社するので、「少ない数のベテラン社員は給料を高く、大勢の若手社員は給料を安く」という制度が都合よかったのでしょう。社員の側も「今は給料が安くても将来は上がる保証があるなら、それでいい。将来、子育て等の費用がかかるようになったころに給料が上がるのはむしろありがたい」と思っていたのでしょう。 かつて労働力不足だったころの年功序列賃金には、労働者が辞めないように、という意味もありました。若いときは会社への貢献より低い給料、ベテランになると会社への貢献より高い給料をもらう制度なので、若いときは会社に貸しを作り、ベテランになってからそれを回収する、というイメージなのですが、途中で退職すると会社への貸しを回収できなくなってしまうからです。 年功序列賃金制も、根幹部分は残っていますが、緩んでいる面も多いようです。能力主義で優秀な後輩が先輩より高い給料をもらう事例が増えた、ということもありますが、バブルが崩壊してゼロ成長になったことの影響が大きいのでしょう。 ゼロ成長で非正規労働者を増やすとなると、新卒採用が減りますから、ベテラン社員の比率が上がってしまいます。しかも定年延長などになったら、給料の高いベテラン社員ばかりになってしまい、人件費負担が重すぎます。そこで、ベテランになっても給料があまり上がらないようにしたり、役職定年、定年後再雇用といった制度でベテランを安く雇う方法を考えたりしているわけです。 バブル崩壊後の長期低迷期、労働力が余っていて、労働者をつなぎとめておく必要性が薄れたことも、年功序列賃金制が緩んだ一因でしょう。最近は労働力不足といわれていますが、不足しているのは現場の「手足」であって、ベテラン社員の管理職を現場の手足として使うのは容易なことではありませんから。