後絶たぬ“特殊詐欺”被害額は過去最悪の8億円超え 汚職事件に検査データ改ざん…揺らぐ公務員の信頼【秋田発】
電話やSNSなどを使い、手口が次から次へと多様化している特殊詐欺。秋田県内でも被害は後を絶たず、2024年の被害額は12月上旬までに過去最悪の8億円超に膨れ上がっている。県発注の公共事業を巡って県職員が業者から現金を受け取っていた事実が発覚するなど、県民の不信感を増大させる不祥事も相次いだ秋田の2024年を振り返る。 【画像】公共事業巡る贈収賄事件を図で解説
後絶たぬ特殊詐欺被害
様々な手口で金をだまし取る特殊詐欺。2024年の県内の被害額は、12月11日時点で過去最悪の8億1000万円に上っている。 都内に住む60代の女性は、秋田県内に帰省中の9月、「携帯電話が不正に使用されている」などのショートメッセージや電話をきっかけに言われるがままに口座を作り、現金1億4040万円をだまし取られた。県内の詐欺の被害額としては過去最高だ。 潟上市の70代女性は、著名人をかたる投資広告をクリックしたことをきっかけに、SNS上で見知らぬ相手とつながった。言葉巧みに誘導された女性はすっかり相手を信じ込み、気づいたときには6531万円もの金をだまし取られていた。 秋田県警生活安全企画課の若松秀樹次長は、「SNSで知り合った相手に金をだまし取られる被害が増加した」と分析し、「現在は若い人、20代の人から高齢者まで幅広く被害に遭っている状況」と話す。 代表的なのが、マッチングアプリやSNSのダイレクトメッセージでやり取りすることで相手に恋愛感情を抱かせ、金をだまし取る「SNS型ロマンス詐欺」だ。中には借金をしてまで金を振り込む人もいるという。 若松次長は、「手持ちの金がなくなった場合、消費者金融から金を借りて入金させる手段も増えている」と話し、注意を促す。 金を要求されるなど、少しでも「怪しい」と感じることがあったら、家族や警察に相談することが重要だ。
県発注の公共事業巡る贈収賄事件
8月、県秋田地域振興局建設部保全・環境課に所属していた三浦学被告(49)が収賄の疑いで、男鹿市の目黒林業の元社長が贈賄の疑いで逮捕・起訴された。 三浦被告は2023年3月、県が共同企業体と契約した事業のうち、道路の木の伐採作業が目黒林業に再委託されるようあっせんし、その見返りとして現金150万円を受け取った。 事件はこれだけでは終わらなかった。 10月、三浦被告は再び収賄の疑いで逮捕された。そして横手市の土木建築会社クラフトの当時の取締役・小松谷行義被告(51)が贈賄の疑いで逮捕・起訴された。 クラフトは2023年7月の記録的大雨の際、冠水した秋田市の秋田中央道路トンネルの復旧事業を請け負った。その裏には、三浦被告が便宜を図り、見返りとして100万円の金を受け取った事実があった。 三浦被告と小松谷被告は2015年ごろに知り合い、一緒に酒を飲んだりマージャンをしたりする仲だった。通常ならば横手市の業者が秋田市の工事を請け負うことは難しく、小松谷被告が役員を務めていたクラフトは、三浦被告のあっせんがなければ、到底県発注の工事など請け負える会社ではなかったという。 三浦被告は12月18日の公判で、「一線を引くべきだった。一緒に酒を飲むのも避けるべきだった。県民の信頼を損ねてしまい申し訳ない」と反省の言葉を口にしたものの、小松谷被告と元社長から受け取った金は、キャバクラやスナック、ギャンブルに全て使ったことを明かした。 裁判は現在も続いていて、懲役2年6カ月、追徴金250万円の求刑を受けた三浦被告の判決公判は1月30日に開かれる。 秋田県は、三浦被告を懲戒免職処分とし、二度と汚職が起きないよう体制の見直しを図っている。 建設部の川辺透部長は、「公務員倫理の研修を行い、職員一人一人が自分事と捉えて意識を改革するように取り組んでいる。また、組織としても全体で改革していかなければならない。1対1のミーティングや面談でいろいろやっていきたい」と再発防止を誓う。