「福沢諭吉は牛乳推し」「理性的な人が紅茶キノコに熱狂」…畑中三応子が食の流行を追い続けるワケ
人間には不健康に生きる自由だってありますよね
――情報過多の中でより正しいものを見極められる、いわゆるリテラシーが必要になってくる。ところで、畑中さん自身はこれまでにハマった健康食やダイエット法など、あるんですか? 畑中 ハマったというほどではないんですが、『粗食のすすめ』という本を読んだ90年代後半には「野菜たっぷり、肉や卵はあまり摂らない」という食生活がいいなと思って実践していました。私は体質的に若い頃からコレステロールが高めなのもあって。でも食事からのコレステロールを減らしても血中のコレステロールが低下する明確な証拠はないということになって、「日本人の食事摂取基準 2015年版」ではコレステロールの摂取制限がなくなったでしょう。 ――当時、大きな話題になりましたね。 畑中 私、あの頃の年齢ならもっと肉や卵をいっぱい食べておいてもよかったんだなって。今はすごい肉食になってます(笑)。 ――あはは、反動でしょうか。栄養学に関しては、それまでの「常識」がひっくり返るようなことがたまに起こりますね。 畑中 マーガリンは以前まで健康的といわれていたのに、トランス脂肪酸を含むからダメでバターのほうがいい、なんてのもそうですね。医学や栄養学もアップデートしていくと、まったく反対のことが「真実」になることもある。ただ、それもまた10年後はどうか分からない。私は栄養士でもなんでもありませんが「いろんなものを偏らず食べる」がいいんでしょうね、やっぱり。 ――健康食品といえば、小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントが問題になっています。どうお感じですか。 畑中 機能性表示食品で死亡者が出たのは初めて。結局、機能性表示食品制度というのはアベノミクスの経済戦略で、国民の安全より企業利益を優先した政策なわけです。おそらくですが、今後は多少なりとも機能性表示食品に関するルールも厳しく変わっていくのでは。すでに去年、消費者庁の調査により「効果無し」となって、機能性表示の届け出が撤回されたものもありました。 ――2023年8月のニュースでは、消費者庁が機能性表示食品の中で「科学的根拠に疑いあり」としたものが88点もありましたね。 畑中 機能性表示食品はしょせん食品ですからそんなに期待できるものじゃない。トクホ(特定保健用食品)は国の審査がありますから効果もゼロとはいえないけれど、医薬品のように「効く」というほどではないことを心して、食べたり飲んだりしてほしいと私は思っています。「摂ってるから私は大丈夫」と安心して食べすぎたり、飲みすぎたりすると逆効果ですしね(笑)。 ――最後に、これから「日本人とヘルシーフード」はどんな形になっていくと思われますか。 畑中 健康食とかダイエット法なども含めて、カスタマイズ化がどんどん進んでいくのではないでしょうか。体内環境が調べやすくなって、個人に応じた対処法が与えられる。近い将来、マイナンバーカードみたいなのに自分の血圧などすべての健康データが登録されて、食堂などでスキャンすると体調にぴったりな食事が出てくるようになったりするかも? ただ、そういうのは「管理されている」感じというか、体をのっとられているような気も私はしてしまう。健康のためだけに食べているわけじゃないし、不健康に生きる自由だって人間にはあるんですから。本の中ではそこまで書けませんでしたけれどね(笑)。