親や祖父母が「ヒザが痛い」という家庭に教える治療法・手術内容【医師監修】
高齢者に多く発症する変形性膝関節症。進行すると歩行が困難になるなど日常生活に大きな障害が出ます。そのため、できるだけ早期に治療を開始するのが理想ですが、もし症状が進んでから治療をする場合にはどのようなことを行うのでしょうか? 【イラスト解説】医師が教える中高年の「膝」の痛み、2つの原因・治療法 重症度別治療法について、あおき整形外科リハビリクリニックの青木先生に聞きました。
変形性膝関節症とは?
編集部: 変形性膝関節症とはなんですか? 青木先生: 膝の軟骨や半月板がすり減って関節の隙間がなくなり、骨に負担がかかることでさまざまな症状を引き起こす疾患のことを変形性膝関節症といいます。 2009年の報告によれば日本人全体で変形性膝関節症の患者数は2500万人と推定されていますが、高齢化が進んでいる現在ではもっと多くなっていると考えられます。 編集部: なぜ、変形性膝関節症は発症するのですか? 青木先生: 主な原因は関節軟骨の老化です。膝は太ももの骨(大腿骨)と脛の骨(脛骨)で構成されていて、骨の表面には軟骨があり、骨と骨の間にはクッションとなる半月板があります。これらの組織が老化によりすり減ることで、変形性膝関節症が発症すると考えられています。 編集部: そのほかに原因はありますか? 青木先生: 老化のほか、肥満も膝関節に負担をかけることから、変形性膝関節症の大きなリスクになります。また膝関節を支える筋力が弱いことから、男性に比べて女性に多く発症しやすいとされています。 編集部: 肥満の人以外に発症しやすい人はいますか? 青木先生: 膝に負担のかかる仕事をしている人(重労働の人など)も発症しやすいとされています。それから外傷に伴う骨折、軟骨や半月板、靱帯などの損傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症も発症の原因になります。
初期の場合の症状と治療法は?
編集部: 変形性膝関節症を発症すると、どのような症状が出現するのですか? 青木先生: 初期では立ち上がったり、歩き始めたりといった動作を開始するときに膝の痛みが出現します。違和感を覚えることもありますが、安静にしているときには痛みなどの症状はありません。 編集部: 初期ではどのような治療が行われるのですか? 青木先生: 症状が軽い場合にはまず、運動療法を行います。具体的には大腿四頭筋強化訓練や関節可動域改善訓練などの運動療法を行って、膝のコンディションの改善を図ります。 日常生活に支障が出ている場合には、痛み止めの薬を内服したり、外用薬を使用したりするなど、薬物療法を行います。 編集部: 中期以降ではどのような症状が見られますか? 青木先生: 中期以降になると、安静にしても痛みなどの症状が見られるほか、正座や深くかがむ動作、階段の上り下りなどが、痛みのために可動域制限が出現します。膝関節の炎症が進み、関節液の分泌量が増えて、いわゆる「膝に水がたまる」状態になります。 また、膝の変形も目立ち始め、O脚が進みます。稀にX脚が見られることもあります。 編集部: 中期以降ではどのような治療が行われるのでしょうか? 青木先生: 初期と同じく、運動療法で膝のコンディションをよくしたり、薬物療法によって症状の改善を図ったり、炎症や痛みを抑えたりします。ただし、保存的治療で効果が乏しい場合には手術も検討します。