親や祖父母が「ヒザが痛い」という家庭に教える治療法・手術内容【医師監修】
変形性膝関節症の手術について
編集部: 変形性膝関節症の手術には、どのようなものがあるのですか? 青木先生: 病態によって手術の術式を検討します。まだ変形が少なく、半月板に異常がある場合には関節鏡(内視鏡)手術を行ったり、自分の骨を生かす骨切り術を行ったりすることもあります。 骨切り術は関節近くの骨を切り、関節の傾きを調整することで体重がかかる部分を変更し、膝の負担を軽減する治療法です。 編集部: そのほかにも手術はありますか? 青木先生: 人工の膝関節に置き換える「人工膝関節置換術」もあります。特に関節の変形が進んでいる場合には、この手術が適応となることが少なくありません。 人工膝関節置換術は傷んで変形した膝関節の表面を取り除き、人工関節に置き換える手術のことで、全部置き換える方法と部分的に置き換える方法があります。 編集部: 骨切り術と人工膝関節置換術は、どのようにして使い分けるのですか? 青木先生: 主に骨切り術は初期の場合に適応になります。変形がそれほど強くなく、自身の関節面を残せる場合には骨切り術を行います。 ただし、骨切り術の場合には骨が癒合(正しくつながること)するプロセスが必要になります。そのため一般的には、骨切り術は変形性膝関節症を抱える中では比較的若い人に行われる傾向があります。 編集部: 最後に、読者へのメッセージがあれば。 青木先生: 変形性膝関節症は必ずしも手術になるのではなく、まずは運動療法で筋力を鍛えたり、歩き方を工夫したりすることで痛みを減らすことを目指します。特に高齢者の場合、全身状態によっては手術が難しいこともあります。 そのため、積極的に運動療法を継続してほしいと思います。痛みなどのために安静にしていると筋力が落ち、かえって症状が悪化することもあります。 しかし、そうした保存的治療を行っても症状が軽減しない場合には、タイミングを逃さず手術に踏み切ることも大切だと考えます。体力面や手術後の回復などを考えると、遅くとも80歳前後で行うことをお勧めします。 ただし、90歳を超えても手術を行い、その後元気に過ごしている方もいらっしゃいます。変形性膝関節症の手術は非常に洗練されており、満足度が高いものです。 手術を躊躇する人も少なくありませんが、今後の人生を考え、適切なタイミングで手術に踏み切ってほしいと思います。