「スクール・ウォーズ」のモデルになった伏見工が前身の京都工学院が花園へ王手…「決勝で歴史を作る」
高校ラグビーの名門、京都市立伏見工を前身とする市立京都工学院が、校名変更後初の全国高校大会出場に王手をかけた。伏見工は年末年始に大阪・東大阪市花園ラグビー場で開かれる同大会を4度制し、平尾誠二さん(故人)らを輩出した。2016年に現校名となってから8年連続、京都府予選決勝で京都成章に敗れているが、今年は5月の公式戦で勝利。悲願の花園に向け、10日の決勝で宿敵に挑む。(松本慎平) 2016~23年度全国高校ラグビー京都府予選決勝の結果
京都工学院は校名変更後も、伏見工の強さの象徴だった赤ジャージーに黒パンツのユニホームで戦ってきた。10月下旬、準決勝を前にした練習を終え、大島淳史監督(42)は選手に「(花園に出て)『アカクロ』を復活させよう」と声をかけた。今月2日の準決勝では、豪雨のため、パスをつなぐ伝統のプレーは少なかったが、フォワード陣が奮闘。29―0で洛北を破り、広川陽翔主将は「決勝で歴史を作る」と意気込んだ。
伏見工は「泣き虫先生」の愛称で知られる山口良治さん(81)が監督を務めた1980年度に、平尾さんらを擁して花園を初制覇。テレビドラマ「スクール・ウォーズ」のモデルにもなった。その後もワールドカップで活躍した田中史朗さん(39)や松田力也選手(30)(トヨタ)らを育てた。
だが、生徒数の減少などで2016年に他校と統合し、校名が変更。その後、私学の京都成章が台頭し、予選の決勝で敗れ続けた。花園も15年度大会を最後に遠ざかっている。
転機は21年。厚い壁を打破するため、OBOG会が「FOXプロジェクト」と名付けた取り組みを始めた。伏見工時代から変わらないキツネのエンブレムが由来で、豊富な人脈を生かして元日本代表らOBに最先端の指導をしてもらう目的だ。
指導はほぼ毎週あり、時には松田選手や田中さんが来ることもある。課題としてきたスクラムでは、手の組み方を変えるだけで相手を押し込めることなど、トップ選手が知るコツを自分たちのものにしていった。
長くチームに息づく「つなぐラグビー」に、フォワードの強さも加わり、今年5月の府高校総体では59―8と京都成章に快勝。現校名で初めて主要な公式戦でライバルを破り、花園への手応えをつかんだ。山口さんがモットーとする「信は力なり」と書かれた横断幕は、今も試合で掲げられる。広川主将は「OBのためにも勝ちたい」と力強く語った。