もっと知りたい北方領土(2)“世界で最も美しい二重火山”は国後島に
終戦から71年経過しましたが、いまだに解決していないのが、不法占拠されたままとなっている北方領土の問題です。ことしは、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島の引渡しを決めた1956年の「日ソ共同宣言」からちょうど60年の節目になりますが、まだ平和条約も、北方4島の返還も実現していません。そうした中、9月に行われた日露首脳会談で、12月にプーチン大統領の来日が決まり、領土交渉の進展が期待されています。 あらためて、北方領土とはどんな場所なのか、どのような自然や産業があったのか。どのような生活を送っていたのか。そして、4島をめぐる今の人々の思いなどを、紹介していきます。 第2回は、北方4島の自然や風土を紹介します。
穏やかな気候変化 珍しい生き物が多数生息
北方四島周辺の気候は、北海道内陸部より寒暖差が小さく、穏やかに推移します。最も暑い8月の気温は15度前後、最も寒い2月の平均気温はマイナス6度前後で、北海道東部とほとんど差がありません。また、四島周辺は曇りと霧の日が多く、日照時間が短いことが特徴です。 動物はヒグマ、キツネ、イタチなどが観測されています。流氷が運ぶ植物プランクトンにより魚が豊富にいるため、周辺水域にはゴマフアザラシ、トド、クジラ、イルカ、ラッコなどが生息しています。渡り鳥や水鳥も多く、シマフクロウのほか、鮮やかな飾り羽と橙色のくちばしを持つエトピリカといった珍しい海鳥がみられます。ちなみにエトピリカとはアイヌ語で「くちばしが美しい」という意味です。
穏やかな丘陵地「歯舞群島」
各島の自然をみていきます。 北海道本島に最も近い歯舞群島は、根室半島の沖合約50キロに点在する「貝殻島」「水晶島」「秋勇留(あきゆり)島」「勇留(ゆり)島」「志発(しぼつ)島」「多楽(たらく)島」などの小さな島々からなっています。どの島も緩やかな起伏のある丘陵地で、笹が生い茂り、樹木はほとんど生えていません。 根室半島先端、納沙布(のさっぷ)岬から3.7キロと最も近い貝殻島は、高潮時には水没してしまいますが、1937(昭和12)年に日本が建設した貝殻島灯台があり、現在はロシアが管理しています。老朽化から傾いている様子が目視で確認できます。 次に近い水晶島は12平方キロメートルの平坦な小島で、秋勇留島はわずか2平方キロメートル、勇留島も10平方キロメートルしかありません。歯舞群島最大の志発島は58平方キロメートル、多楽島は11平方キロメートルです。歯舞の名称の由来は、「流氷のある島」という意味のアイヌ語です。(※歯舞群島各島の面積の数値は平成27年度国土地理院「全国都道府県市町村別面積調」より)