中国・ロシアで新覇権争い「グレートゲーム」最前線の中央アジア 中国とカザフスタン国境の街を歩いた
中国政府に不満をもつウイグルの人たちはカザフスタンなど中央アジアの国々を経由し、国外に亡命してきた。それを防ぐため厳重な国境警備になっているのだという。 近年、新疆ウイグル自治区の人権をめぐり、中国は国際社会から批判を浴び続けているが、ヨーロッパにつながる要衝のカザフスタンに隣接する新疆ウイグル自治区は中国政府にとって絶対に手放せない場所。だからこそ異常なまでの「漢族との同化政策」をとり、「テロ対策」「貧困対策」の名のもと「強制収容所」に人々を送り込み、独立運動を押さえつけるのだ。思いがけずウイグル問題の本質を、厳しい国境警備から垣間見ることになった。 旧ソ連の一員だったカザフスタンをはじめとする中央アジアの国々は、もともとロシアの影響力が強く「ロシアの裏庭」と呼ばれていた。しかし今、大きな変化が起きている。転機となったのは2022年のロシアによるウクライナ侵攻。これにより、中央アジアにおけるロシアの経済的な影響力が低下。その隙を突くように影響力を拡大し始めたのが中国だ。 中国は2023年、「中国・中央アジアサミット」を初めて開催。中央アジアの国々に対し約5000億円の融資と無償援助を行うことを表明した。ヨーロッパへの窓口という地理的な重要性に加えて、中央アジアの国々が持つ石油や天然ガスなど豊富な資源も中国にとって大きな魅力となっている。そしてカザフスタンの最大の貿易相手国は昨年、ついにロシアから中国にとって代わった。 ■「ウクライナ侵攻については聞かないでください」中国とロシアの間で揺れるカザフスタンのしたたかさ ようやく会えた「自由貿易特区」の責任者。しかし、彼の口から飛び出したのは、思いがけない一言だった。 ホルゴス国際国境協力センター・ヤーゼン・サイノビッチ・クルマシェフ社長 「この自由貿易特区はカザフスタンと中国のビジネス関係の始まりです。この特区はまさにその原点なのです。ここを経由して中国とヨーロッパはつながっているのです」 「ただし、中国の『一帯一路』のプロジェクトに直接の関わりはありません」