中国・ロシアで新覇権争い「グレートゲーム」最前線の中央アジア 中国とカザフスタン国境の街を歩いた
想定外のバスの旅。しかし、その旅は思いがけず中国とカザフスタンの力関係を考えさせられるものになった。車窓から景色を眺めていると、高層ビルが建ちならぶ中国側の発展ぶりとは対照的にただただ荒野が広がっている。印象的だったのはカザフスタンから中国に向かうトラックの荷台の多くは空っぽだったこと。中国からの輸入品を運ぶためのトラックであることがうかがえる。実際、バスに乗り合わせた中国人男性は中国で買い付けた日用品をカザフスタン側に売る貿易の仕事をしていると話した。「自由貿易特区」でも衣類に日用品に電化製品にとあふれんばかりの中国製品に比べ、カザフスタン側の「売り物」ははちみつとチョコレートくらい。「あまりに貿易不均衡では?」と心配になったが、中国側にももちろんメリットはある。それはカザフスタンの石油、天然ガスや鉱物などの資源だ。そして何度も繰り返すが、中国にとってのカザフスタンの重要性はヨーロッパへの窓口、ということに尽きる。 もうひとつ、バスの旅で気が付いたことがある。異常に厳しい国境管理である。中国とカザフスタンの間には高い鉄条網で囲われた緩衝地帯が延々と設置されている。数キロおきに監視塔もある。国境越えのルートは先ほど記したバスルートのみ。しかもバスを乗り降りする度に国境警備隊の再三にわたるパスポートチェックがあった。中国とカザフスタンの関係は良好なはずではなかったのか?厳しい国境警備の理由。それは、ホルゴスが「新疆ウイグル自治区」にあるからだと、 法政大学の熊倉潤教授は話す。 法政大学・熊倉潤 教授 「中国にとってカザフスタンは新疆ウイグル自治区を『統治する』ためにも重要なのです。新疆ウイグル自治区からカザフスタン経由で国外に逃れたウイグルの人たちも多く、また、カザフスタン経由で『ウイグル独立』などの思想の流入を防ぎたい中国にとってカザフスタンは『新疆ウイグル自治区の治安を維持』するためのパートナーとしての意味合いも強いのです」