なんと、「存在しないはずの図形」が発見された…! 簡単そうだけど、50年も見つからなかった「摩訶不思議な模様」衝撃の登場
そしてアインシュタイン・タイルへ
ペンローズ・タイルの発見により、「非周期的な平面充填」問題の核心はいよいよ、「それは果たして、たった1種類の図形で可能か?」へと至りました。 たった1種類なのに、非周期的にしか平面を敷き詰められない図形--『ペンローズの幾何学』ではこれを「非周期モノ・タイル」とよびます。そして、この非周期モノ・タイルこそ、「アインシュタイン・タイル」です。 ペンローズからアインシュタインへとは、科学ファンをワクワクさせてくれる名称ですが、この風変わりな名前は、ドイツ語で「一つの石」、転じて「1枚のタイル(モノ・タイル)」を意味するein steinに由来します。 2023年の大発見とは、たった1種類で非周期的な平面充填だけを可能にする図形、すなわちアインシュタイン・タイルがついに見つかった、というものだったのです。 この分野をよく知る人々にとってはまさに寝耳に水、青天の霹靂というべき衝撃であり、当初はみな、半信半疑でこのニュースを受けとめたわけですが、さまざまな情報を吟味するうちに、「どうやら本当らしい」というのが共通の認識となっていきました。 筆者らを含むこの分野に関心の高い人たちはなぜ、半信半疑だったのでしょうか?
存在しないはずの図形
それは、ペンローズ・タイルの発見から半世紀もの時を経ていたからです。 前述のとおり、2万426種類から始まった非周期的な平面充填だけを可能にする図形は、わずか10年で2種類まで減らされました。その後の50年近くにわたってモノ・タイルは見つからなかったのですから、にわかに信じることができなかったのも当然です。 実際、21世紀に入るころには、「1種類(モノ・タイル)による非周期にしか平面を敷き詰められない図形は、おそらく存在しないだろう」と考えられていたのですから。 それではその、「存在しない」と考えられていたアインシュタイン・タイルは、いったいどんな図形なのでしょうか。 まずは、今回発見されたアインシュタイン・タイル、つまり非周期モノ・タイルを並べた図を見ていただきましょう。
簡単に敷き詰められそうだが……?
この図形が、実際に「非周期にしか平面を敷き詰められない」ことについては『ペンローズの幾何学』の第5章以降で解説しますが、今のところは信じていただくしかありません。 この図は一見すると、簡単に敷き詰められそうですが、実際にはそうならないという、摩訶不思議な模様になっています。 『ペンローズの幾何学』の目的の一つは、このアインシュタイン・タイルが発見されるまでの長い道のりを解説することにあります。 ペンローズの幾何学 対称性から黄金比、アインシュタイン・タイルまで
谷岡一郎、荒木 義明