西武入団も「まず失敗した」 18歳で1軍抜擢も“苦痛”の日々…願い続けた登録抹消
秋山幸二の練習を見て発見したプロで生き抜くヒント
1軍に呼ばれて1か月半ほどが過ぎたころ、試合後に球場で入浴していると近藤昭仁守備・走塁コーチが「笘篠いるか? なんだ風呂か。出たら監督のところへ行ってくれ」。突然の呼び出しによぎった思いが「もしかして抹消してくれるのかな」だった。 「毎日、早く抹消してくれ、と思っていました」。急いで広岡監督の元にいくと「どうだ、笘篠。1軍のレベルが分かっただろ」。「はい、よく分かりました」「明日から2軍で鍛え直してこい」「ありがとうございます!」。思わず感謝が口から飛び出した。「喜んで荷物をまとめて2軍に帰りましたよ。魔の1か月半でした」と笑った。 2軍に戻ると自分と向き合い、再び鍛錬の日々。「秋山さんの打撃がすごい。肩も強いし、足も速い。でも全然1軍に呼ばれない。さらに鴻野淳基さんもいる。順番をみても、打つ方でいくら頑張っても絶対に1軍に上がるのには相当時間かかる」と判断した。 笘篠氏はドラフト2位指名を受けた当時は、明大入りが内定していた。父とは4年で1軍選手になれなかったらプロを辞めて、勉強しなおして大学に行って就職すると約束していたのだ。 実力差を痛感。しかし、1軍にもっとも“近い”位置にいた秋山を見ていると、あることに気がついた。「確かに足は速い。盗塁もすごい。でも打球判断を見ていると1テンポ遅れている。2テンポの時もある。他の選手もそうでした。走るスピードは秋山さんに少し負けるけど、走塁の技術や犠打、右打ち、バスターなど小技サインも多かったので、そっちを極めた方が1軍のチャンスがあるんじゃないかと考えだしたんです」。 守備力と走力で活路を見出すヒントを見つけた。西武の黄金期に欠かせぬユーティリティープレーヤー誕生のきっかけとなった。
湯浅大 / Dai Yuasa