「Come to school(教えてやるから来いよ)」河村勇輝はなぜNBAスター選手たちに愛されるのか? “理想的な環境”だけじゃない急成長の秘密
コミュニケーションにも表れる“学ぶ力”
河村は、日本にいたときも高校からBリーグ、さらに日本代表と、まわりのレベルが上がるたびに成長してきた。アメリカに渡ってからもその成長ペースは落ちることがない。むしろNBAという世界一のリーグのレベルに触れ、スポンジのように吸収することで、成長のスピードが加速しているようにすら見える。 彼の学習力はバスケットボールに限らない。たとえば語学力。渡米後わずか2~3カ月でチームメイトたちとも普通に会話をしている。チームメイトたちが面白がって教えるスラングまで覚えて、実際に使ってみたりもする。といっても、単に丸覚えして所かまわず使うのではなく、そのスラングを使ってもいい場面を理解し、時と場合で使い分けようとしているところが、賢い彼らしい。 チームメイトたちからしたら、色々なことを貪欲に学び吸収していく河村だからこそ、さらに色々なことを教えたくなるようだ。 たとえばベンチからチームメイトを応援しているときのセレブレーション・ポーズもそうだ。河村を自分の弟分のように見守っているモラントも、優秀な生徒相手に教えることが楽しいようで、次々と新しいポーズを教えてくれる。 「彼(モラント)が僕の方を見ながら(ポーズを)やったりして、それに自分が応えて一緒にやったり、という感じですかね」と河村。 見たことや新たに学んだことを、とりあえず自分でやってみるというのは、昔からの彼の学習法だ。 「まずはやってみるっていうところから始めて。でもやってみて、自分の感覚として『あ、違うな』っていうこともあれば、これをしっかりと繰り返していけば身につくなっていうものもあります。やってみるっていうところからスタートして、そこから自分の感覚を感じながら取捨選択していくみたいな感じですかね」
ミスを成功体験に繋げる
英語に関してはシュートとは違い、今は間違えても、学んだことをすぐに使うことを意識しているのだという。 「英語の部分は、インプットしたものをすぐにアウトプットしてみる。今は英語でミスしても教えてくれる環境があるので、とりあえず使ってみて、違うときは教えてくれますし。バスケットではあまり練習してないシュートを挑戦すると、大体失敗っていうか。大体シュートはミスで終わってしまうんですけど、研究を重ね、練習を重ねながら、ミスを成功体験に繋げていくっていうのはすごく大切なことだなとは思う」 今は学んだことを実践することがやりやすい環境にいる。河村がグリズリーズと交わしたツーウェイ契約は、NBAのグリズリーズと、傘下のGリーグチーム、ハッスルを行ったり来たりできる契約なのだ。グリズリーズではまだベンチから見ている時間が長い下っ端の選手なので、試合中はとにかくチームメイトや相手選手のプレーを見て学ぼうとしている。一方、Gリーグの試合では中心選手としてNBAで学んだことを実戦で試すことができる。 「(NBAとGリーグで)自分の役割は全く異なると思っていて。グリズリーズではベンチからとにかく雰囲気を盛り上げられるように声かけたりとか、声出したりとか。あとはベンチからスコッティ(・ピッペンJr.)だったり、ジャだったり、いろんなポイントガード選手のプレーから学ぶ。肌感覚で感じながら学べる環境は本当に素晴らしいと思います。 ハッスルではスターティング・ポイントガードとしてゲームをコントロールしないといけないので、よりコミュニケーションを多く取っています。ゲームの中のオンコートでとにかくコミュニケーションを取るっていうのは意識していて。ハッスルでも若いほうで、英語もまだまだ拙いですけど、とにかく喋ってコントロールするようにしています」 トライ&エラー。失敗を恐れずに試行錯誤ができる環境と、挑戦するメンタリティ。それが河村の成長を支えている。 〈後編に続く〉 ◇ ◇ ◇ 後編では、自身の代名詞にもなった「パリ五輪・フランス戦」について河村本人が振り返っている。
(「日々是バスケ」宮地陽子 = 文)
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