30代後半で妊娠 出生前診断で心理的負担 “陽性”結果に「泣きながら片っ端から病院に電話」
30代後半で、第1子を妊娠した。自分のやりたかった職業に就き、仕事が落ち着いたタイミングで子どもを望んだ結果で、いわゆる高齢出産にあたる。そのため出生前診断に興味があった。 出生前診断と言ってもその方法はいくつかある。母体血清マーカー検査やコンバインド検査、新型NIPT(新型出生前検査)など、検査方法や精度(検査結果がどのくらいの確率で正しくでるか)はさまざまだ。 東京都に住む30代後半のAさん。不妊治療を乗り越え妊娠がわかり、通っていたクリニックで医師とのやりとりの中で母体血清マーカー検査(クアトロ検査)を受けた。深くは考えていなかったが高齢出産にあたるため、一応調べてみるかという軽い気持ちだった。 しかし、結果は陽性。 「目の前が真っ暗に。確定診断を行うのですが、その日まで泣いて過ごしていました。精神的にも追い込まれてました」と当時を振り返る。 出生前診断の結果だけでは胎児について診断することはできないので、検査で陽性になれば羊水検査と呼ばれる確定診断をする必要がある。羊水検査には流産のリスクも伴う。 Aさんは検査を受ける際にも、通っていたクリニックでは取り扱いがなかったので他の病院で受診しないといけなかった。だが病院が受診できる人数を絞っていて、Aさんはなかなか羊水検査をしてくれる病院を見つけることができずにいた。 「泣きながら片っ端から検査をしてくれる病院を探して電話をしました」 その後、なんとか確定診断の羊水検査を受けてくれる病院で検査し、結果は陰性だった。元気に生まれた子どもはすくすく育っている。 検査の結果は、あくまで可能性を示すものだ。Aさんのように陰性なのに陽性の結果がでる“偽陽性”や、その逆の場合もある。 筆者も妊娠がわかり、出生前診断を受けることを決めた。 Aさんが受けた母体血清マーカー検査よりも精度が高く、リスクも少ないといわれる新型NIPTを受けた。検査方法も採血だけなので、体の負担は少ない。 新型NIPTを日本医学連合会が認証した認証施設での検査を受ける際は、必ず遺伝カウンセリングが必要になってくる。夫婦でカウンセリングを受け、この検査でどんなことがわかるか説明される。 カウンセリングの前に、もし陽性だった時にどうするか、夫婦で話し合った。夫は全て私の決断を受け入れると言ったが、その言葉に腹が立った。全ての責任や葛藤を一人で背負えと言われたように感じたからだ。 「実際に陽性になってみないとわからない」と何度も言う夫と毎日のように話し合い、ひとまずの結論を出し、遺伝カウンセリングに望んだ。 受診した病院ではカウンセリングを受けられる曜日が決まっていたので、その日待合室にいる夫婦がみんなNIPTを受けに来たように見えて、ドキドキしたのを今でも覚えている。 出生前診断を受けることは、産む産まないを選択するためのものではない。胎児の状況を早く知ることにより、その時点でできる治療を積極的に選べるというメリットもある。 結果は陰性だった。ただ筆者も陽性だった場合、どうするかを夫婦で話し合って決めてはいたものの、本当にそれがベストな選択なのどうか…。実際に陽性だった時、本当に事前の話し合いの通りに決断できていたか、いまでもわからない。 新型NIPTは血液を取るだけの検査でリスクも体への負担も少ないと言われている。しかし、心理的負担は大きい検査だった。 (デイリースポーツ特約・氷室ゆに)