潘基文国連事務総長は海外でどう評価されているのか?
国連事務総長に求められるのは「よく指図を聞くこと」
一方でペイス氏は「潘基文氏が、最もふさわしく最も強いリーダーだから選ばれたと考える人は誰もいない」と指摘し、国連事務総長の選定手続きの問題を批判する。 「過去69年間、常任理事国5カ国は、事務総長の役割や望ましいリーダー像について一致してきませんでした。その不一致から、常任理事国5カ国は、各国にとっての『望ましい候補』をお互いが拒否権を使って弾きあってきた。事務総長の選定は、各国にとって『最も嫌ではない』候補が選ばれるまで拒否権を使い続ける、というパターンに堕落しているのです」 前国連事務総長のコフィ・アナン氏はイラク侵攻について批判したが、これに対し、特にアメリカと常任理事国の一部は反感を持っていたという。そのため2006年に潘事務総長を選ぶ際、当時のライス米国務長官が「アメリカは強い事務総長ではなく、よく指図を聞き、自分たちの秘書になる弱い事務総長を望むと発言したと伝えられている」とペイス氏は語る。「潘基文氏は、アメリカと中国、そして恐らくロシアが事前同意した後、常任理事国を含む安全保障理事会で選ばれた」 ペイス氏は、常任理事国が国連の重要ポストに自国出身者を配置しており、常任理事国はそれを黙認することを受け入れた人物を国連事務総長に据えていると批判する。日本では、潘氏が抗日戦勝記念式典の軍事パレードに参加したことなどから「潘氏は『反日的』なのではないか」という見方もあるが、ペイス氏は「反日的」なのではなく、事務総長の選考過程上「中国を含む常任理事国に迎合しなくてはならない」のだと指摘する。
紛争解決の失敗は常任理事国に責任
潘氏の任期中には、リビアやシリアにおける内戦、イスラム国による危機の拡大など国際の平和と安全を脅かす事態が多発した。これについて潘氏のリーダーシップの欠如を批判する声もあるが、ペイス氏は「国連事務総長ではなく、安全保障理事会の常任理事国5カ国に主たる責任がある。これらの国連の失敗事例について、国連事務総長はスケープゴートになっている」と話す。