藤井風、稲葉浩志、くるりなどの魅力を再発見…NHKオフィスで演奏する音楽番組を強烈に推す訳
真偽はともかく、重要なのは、そういう話題が盛り上がるほどに、今の音楽ファンは「生」の判定にシビアだということだ。 逆に言えば「これ、本当に生?」という疑いの目を持ち続けながら、日々、音楽コンテンツに接している。事実私も、紅白歌合戦のときなどは「生(歌・演奏)チェック」に忙しい。 ■正真正銘の一発撮り 話が長くなったが、こういう背景の中で、『tiny desk concerts JAPAN』の存在価値がある。
ライブやフェス、さらには白バックの非日常空間で撮影されているTHE FIRST TAKEではない、オフィスの執務室という日常の延長のような空間だからこそ成立する、こけおどし、ごまかし、めくらましの一切利かない音楽番組。 さらにメンバー1人ひとりの腕っぷし、声っぷしが問われる音楽番組、「出来合い」ではなく「出来立て」の音楽に触れられる音楽番組(実際、収録を観覧したNHKの知り合いに聞いたが、正真正銘の一発撮りだったという)。
そんな番組だからこそ思うのは、かなり作り込まれた音楽世界で表現してきている(というイメージの強い)音楽家に出演してほしいということだ。 私にとって、それは稲葉浩志だったが、他にも候補はたくさんいるだろう。個人的には「オフィスこぢんまりOfficial髭男dism」を見てみたい。 ■最近の音楽番組は「懇切丁寧」 最近の音楽番組は、本当に「懇切丁寧」だと思う。「出来合い」の音楽を流しながら、「ドラマ●●の主題歌で話題沸騰中の新曲!」「●●ダンスがSNSで大流行中の最新ナンバー!」「サビの歌詞が泣けるとZ世代の推し増殖中!」などと、MCからテロップから何から何まで総動員して、「どう聴くか」「どう楽しむべきか」を指示してくる。
うるさいことこのうえない。ほっといてくれと言いたくなる。 対して、私が求めるのは、『tiny desk concerts JAPAN』である。聴き方の押し付けなんて必要ない。音楽、そのありのままを、しっかり聴かせて・見せてほしいのだ。あとは音楽ファンの私たちが勝手に判断して、勝手に感動するのだから。 以上、今回はtinyな番組のbigな可能性について述べてみた。
スージー鈴木 :評論家