藤井風、稲葉浩志、くるりなどの魅力を再発見…NHKオフィスで演奏する音楽番組を強烈に推す訳
そもそも私は、仕事柄、テレビの音楽番組は、今でもよく見ているつもりだ。しかしそんな中、『tiny desk concerts JAPAN』だけに強く惹かれるのはなぜだろう。 ■拡大する音楽市場を牽引する「ライブ」 博報堂DYグループコンテンツビジネスラボによる新刊『令和ヒットの方程式』(祥伝社新書)によれば、日本の音楽市場は拡大しており、2025年には9000億円規模に届きそうな勢いである。 問題はその内訳である。その中で半分以上の比率を占め、かつ21世紀に入って急拡大しているのが「コンサート」なのである。つまり音楽市場の大票田は、パッケージでもサブスクリプションでもなく、ライブなのだ。
それにしても、なぜ人々は最近、そんなにライブに行きたがるのだろう。いや、人々をライブに向わせる「生」への渇望が生まれる理由はよくわかる。 サブスクリプションや動画サイトなど、ネットワーク経由をした「出来合い」のデジタル音源を、ずっとイヤフォンで聴き続けていると、「出来合い」ではなく「出来立て」の生演奏・生歌を、空気をブルブル震わせる生音で聴きたいというニーズが高まるのは、ある意味で自然なことだ。
■「生」感が重視される時代 ただ特に、最近のスタジアム級の大規模コンサートなどでは、サウンドは過剰に加工され、また照明などの演出も華美かつ過多で、大人数の観客一体感の中、それはそれで盛り上がりはするけれど、「これ、あんがい『生』じゃねーな」という感覚に陥ることがある。「これ、『出来立て』じゃなく『出来合い』じゃね?」とか。 そんな流れの中で、比較的「生」感の担保されるライブ形態である「フェス」の隆盛があるのだろうけれど。
そんな中、ネットワークの中でも、「生」感を持って音楽を届けようとしたのが、2019年に生まれたサイト「THE FIRST TAKE」である。 「FIRST TAKE」=「一発撮り」をコンセプトとして、音楽ファンの幅広い支持を得た。ただ、今となっては憶えている人も少ないかもしれないが、昨年、このTHE FIRST TAKEで、ボーカルの音程を修正する「ピッチ補正」が行われているのではないかという指摘が取り沙汰されたのだ。