「政界のフィクサー」「球界のドン」渡辺恒雄氏が残したもの…御厨貴名誉教授に聞く
■球団オーナーの“野球観”
(Q.球団オーナーとしては、どんな印象を持っていますか?) 御厨貴名誉教授 「基本的に野球が好きじゃない人だから、やっぱり好きじゃない人がやるのはまずいですよ。渡辺氏と話すといつも『どうしてバッターは打ったら1塁に行かなきゃいけないのか。3塁に行ったらいけないのか。そこの論理的説明は誰もしていない』と言っていました。野球協約には興味がある人。これは一般的な興味とは合わない。一生懸命やる人でしたが、ちょっと違ったかなと」 (Q.ある意味、昭和を象徴する人だったのでしょうか?) 御厨貴名誉教授 「まさに“昭和の男”です。渡辺氏にとってみれば、平成の総理は何となく合わない。要するに子ども扱いになっていくわけです。そして今度は自分のところに呼びつける側になりました」 (Q.読売新聞で政権に対する提言報道もありましたね?) 御厨貴名誉教授 「自分の使命は、そういった人たちに教えていくことだと。ただそれが、読売新聞の社長としてやる。あるいは会長としてやることに問題がなかったかどうかは別問題です」 (Q.亡くなるまで主筆という肩書にこだわっていましたがどうみますか?) 御厨貴名誉教授 「渡辺氏は主筆という言葉と同時に“筆政”を大事にする。最後の最後まで渡辺氏の看板は主筆。これはやめないと。これが自分の命だと。ただ、そこまで思ったのなら、どうして引き際を考えなかったのかと思います。渡辺氏には引き際の美学というものがありません。だから常に浮遊していて、止まるところがない。止まるところがないから、また権力的なところに手を伸ばしていく。そこが最後はちょっと悲しいかなと」 (Q.後ろに続く、自分に代わる記者を育てることには熱心でなかったですか?) 御厨貴名誉教授 「全然、熱心じゃなかった。本人が面白いからやっちゃう」 (Q.長い時間をかけた記者人生は敬意に値しますか?) 御厨貴名誉教授 「経緯に値するし、こういう人は2度と出ないだろうなと思います」
テレビ朝日