テレビからYouTubeへ“戦略的撤退”――。オリエンタルラジオ・中田敦彦の戦い方
オリエンタルラジオの中田敦彦は希代のヒットメーカーとして知られる。リズムネタ「武勇伝」で颯爽とデビューし、ダンス&ボーカルユニット「RADIO FISH」としてリリースした『PERFECT HUMAN』は大ヒット。現在手がけている教育系YouTubeチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」は登録者数300万人を超えた。昨今では『幸福論』などを執筆し、文筆家としても活動の幅を広げている。中田は何を企むのだろうか。本人に話を聞いた。(取材・文:ラリー遠田/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「干された」は半分正解
「中田敦彦のYouTube大学」では、歴史、文学、ビジネスといった分野のさまざまなテーマを取り上げ、講義形式でわかりやすく解説している。中田はある時期から徐々にテレビの仕事を減らし、YouTubeに活動の軸足を移していった。 「『干された』と言われることもあるけど、それも半分正解なんですよ。干されてもおかしくないなって自分で思っていたところもあるし。ただ、最後は自分から『すみません、もう卒業させてください』と言って辞めたんです。ここにいるよりもほかにやりたいことがあると思ったから」
中田がテレビから離れたきっかけは、視聴率が取れないことにあった。オリエンタルラジオは若者からの支持は高かったのだが、地上波テレビのメインターゲットである50代以上からの人気がなく、そのせいで視聴率が伸びていなかったのだ。 メインターゲットに訴求できないなら勝ち目はないと思い、中田は戦いの土俵をYouTubeに移すことにした。それは決してただの敗北ではなく、勝つための戦略的撤退だった。
「果たして僕らの世代が(明石家)さんまさん、ダウンタウンさん、有吉(弘行)さんの世代に勝ててないんだろうか、と思ったんです。芸人界では『お前らの世代が不甲斐ないから上の世代が元気なんだ』って言われるんですけど、本当にそうなのか。だって、例えば僕らの世代だったら、ナインティナインさんが出ていた『めちゃ×2イケてるッ!』が最高のコンテンツだったわけです。最高のコンテンツは世代によって違う。だとすると、僕らが中高年の視聴者が多い地上波で勝てないのは、単にそのプラットフォームが自分たちに合っていないだけじゃないかと思ったんです」 かつてテレビは唯一にして最高のメディアだった。だが、今はそうではない。若者はとっくの昔に不便で古臭いテレビに見切りをつけ、YouTubeにシフトしていた。そこでは若者を熱狂させるスターが次々に生まれていた。