嫌いな人がバカバカしい存在に思える、脳科学的「言い換え」の技術
会社に行きたくない、集中力が続かない、ついお酒を飲みすぎてしまう……。こうしたお悩みを脳科学と臨床心理学で解決してくれるのが、テレビでもおなじみ、篠原菊紀先生。篠原先生の著書『「しなやか脳」でストレスを消す技術』から、不安やストレスの多い今だからこそ身につけたい、「しなやか脳」になるためのノウハウをご紹介します。
嫌いな部分を「○○力」に言い換えてみよう
職場に、取引相手に、はっきり言って「嫌いな人」がいる。しかし仕事上、避けては通れない人物。うまく付き合っていかなくてはならないのだが……。 とりあえず、その人のどこが嫌いなのか、何で苦手なのか、書き出してみてください。気が短いから嫌いだとか、ウソばかり言うから嫌いだとか、細かいことを気にしすぎるからとか。 書き出したら、今度はそれを“○○力”という言葉に言い換えてみてください。例えば細かい間違いを見つけてはネチネチと言ってくる上司であれば、その人には“観察力”がある、気が短いのなら“即決力”がある、という風に。 すると“細かいことをネチネチ言う”“気が短い”といった嫌いな部分が、“観察力”“即決力”という、どちらかというとポジティブな言葉に置き換えられたことで、嫌いというネガティブな感情から一瞬、切り離されるのです。いつのまにか妙に尊敬できもします。 人間の嫌いという感情は概ね、加速していきます。「細かいことをネチネチ言うから嫌い。そう、嫌いなのは細かいことをネチネチ言うから……」と頭の中でグルグルと回してしまい、嫌いという感情が増幅してしまうのです。 それを一旦、切ってあげる。“細かいことをネチネチ言う”を、ポジティブなイメージに結び付きやすい“○○力”という言葉を使って、何とか言い換えようとするだけで、この連鎖がゆるむのです。 観察力という言葉に変わったことで、嫌いのループは一旦、止まる。特に“○○力”=“○○パワー”という言葉であればポジティブな感情になりやすいので、嫌いとの結び付きは切られやすい。 切られて、立ち止まって、そしていつのまにか、「細かいことをネチネチ言う、ただの嫌みな上司だと思っていたけど、一方では観察力が鋭い人間という見方ができるかもなぁ……」と思えたりします。 これはその人を客観的に見られるようになったという状態でもあります。客観的に観察すると、大脳新皮質が働き、脳の奥に由来する感情の働きが相対的に弱くなって、とりあえず受け入れやすくなるのです。嫌い嫌いで見るのもイヤだったはずが、とりあえず見られるようになるのです。