お医者さんごっこに「AEDを」 〝AEDおもちゃ〟を開発した理由 人の命を救う「かっこいい機械」
「お医者さんごっこ」に仲間入りしたい
しかし、すでにペーパークラフトがあるのに、わざわざ「おもちゃ」を作ろうと思ったのはなぜだったのでしょうか? 坂野さんは「AEDは全国で約69万台が設置されており、『モノ』自体は増えています。じゃあなぜ、実際に使われた例が少ないのだろうと考えました。大事なのは『身近さ』ではないかと思ったんです」と語ります。 「大人を意識改革するのはなかなか難しいので、子どもの頃から遊んでなじんでほしいな、と思っています。お医者さんごっこに『AEDのおもちゃ』が仲間入りしてもらえれば、一緒に遊んでいる親や幼稚園・保育所の先生も、AEDとの距離感が近くなってもらえると思うんです」 しかし、これまで子どものおもちゃを開発した経験もなく、計画がスタートした2023年1月からすべてが手探りでした。 「デザインや基盤、本体の制作、おもちゃとしての楽しさ、安全性など、いろんな方が協力してくれて、できあがりました」と振り返ります。 11月1日から先行予約(https://toycocoro.com/shop_lp)を始めた、AEDのおもちゃ「トイこころ」。 お医者さんごっこで遊び出す3歳以上を想定し、AEDを「知る」ことが目的のおもちゃで、流れる音声やライトの光り方なども「遊ぶ楽しさ」を重要視しています。 課題感は、ペーパークラフトを制作した時から変わっていないといいます。 「AEDって、人の命を助けるすごい機械ですが、どんな風に動くのか開けるまで分からないしイメージできません。『あそこに設置されているのは知っているけど…』とブラックボックス化しているのではないか、開けるのに勇気がいるのではないかなと思いました。その背中を少し押せたらいいなと思ったんです」 どんなボタンがあるのか、どんな仕組みで動くのか、知っているだけでも「使う」というハードルは下がりそうです。 坂野さんは「そもそも『電気ショック』という言葉ってちょっと怖いですよね。でも実はちゃんと安全機能があって、操作も簡単です。ペーパークラフトもAEDのおもちゃも、身近に感じてほしいという思いからつくっています」と語ります。 「まじめに真剣に学ぶことはもちろん大事ですが、自分の性格上、それが苦手なんですよね(笑)。楽しく学んで、それが誰かの命を助けることにつながったらいいなと思ったんです」