「海のはじまり」村瀬Pが語る、俳優・目黒蓮の成長「今までの彼にはなかった表情を」
フジテレビ系で放送中のドラマ「海のはじまり」。本作は主演・目黒蓮(Snow Man)×脚本・生方美久×演出・風間太樹×プロデュース・村瀬健の「silent」(フジテレビ系)チームが再集結して贈る、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品です。 放送後にはSNSでトレンド入り、さらに海の誕生秘話が描かれた第6話では見逃し配信数が放送後1週間で434万再生を突破するなど、毎回大きな反響を呼んでいる本作も、次週いよいよ最終話を迎えます。 このたび、最終話放送を前に、プロデューサーを務める村瀬さんにインタビュー。「silent」以来のタッグとなる目黒さんの印象の変化や、制作の裏側、最終話の見どころなどを語っていただきました。
ドラマを制作する上で大事にしているのは「“少ない”って、“いる”ってことだもんね」という言葉
──特にこだわっている演出や、思い入れのあるシーンについてお伺いできますでしょうか。 「本作は、風間監督、髙野舞監督、ジョン・ウンヒ監督という、僕が信頼している3人の監督に演出してもらっています。3人それぞれに持ち味があり、3人とも生方さんと僕と一緒にやったことがあるので、“何話はこの監督で”というのが決まった段階で、その監督が撮ることを想定して書いてくれているところもあると思います。ちなみに、スピンオフの『兄とのはじまり』と特別編『恋のおしまい』を撮ってくれた山岸一行監督の演出がすごく良かったので、山岸監督にも本編を撮ってもらうことにして10話をお願いしました。演出でこだわっているのは、電話のシーン。生方さんの脚本では、電話のシーンで相手を見せるか見せないかが書いてあるのですが、それを読んだ上で僕や監督たちが意見を出し合い、話し合って決めています。電話の向こうの相手の姿をそのまま見せる時もあれば、声だけ聴かせて姿は見せない時もあったり、向こう側の声さえ入れなかったり…と、いろんなパターンがあります。そして、電話のシーンでは基本的に、電話の相手の声も同時に撮っています。例えば、1話で夏(目黒)に水季(古川琴音)から別れを切り出す電話がかかってくるシーンがありましたが、この時は、わざわざ現場に古川さんに来てもらい、目黒くんからは見えないところで本当に電話をしてもらいました。『silent』でも同じ手法で撮影していて、その時に『このやり方だと特別なものが生まれるな』と知ってしまったんです。電話のシーン一つにしても、見せ方にこだわって丁寧に撮影をしています」 ──生方さんの脚本では、何気ない会話のセリフにも全て意図があるように感じます。 「生方さんの言葉選びのセンスは、類いまれなる才能だと思っているので、基本的には僕がセリフを直したりすることはほとんどありません。ただ、ドラマはいろんな考えを持っている人が見ているから、本当に伝えたいことが伝わらないこともあると思っています。僕たちは、“伝えたいことが伝わらないこと”を恐れずに制作に当たっていますが、違う捉え方をされるようなことはしたくないよね、といつも話していて。人の心情を丁寧に描く上で、そこはすごく意識しているので、僕から生方さんに『この言い方だと、こういうふうに捉えられてしまうかもね』と意見をすることはあります。そして、誤解される危険があるセリフは違うものに変えていきます。僕がドラマを制作する上で大事にしているのが、『silent』の紬(川口春奈)のセリフにあった『“少ない”って、“いる”ってことだもんね』という言葉。まさに生方さんが書いたセリフなんですけどね。多くの人が、先入観や知識でいろんなものを決めつけたがるけど、そうではない人もいます。いろんなパターンがあって、いろんな人がいるということをいつも意識しながら、生方さんの本を世に送り出しています」 ──死別や中絶など、ナイーブな要素を描く上で意識したことを教えてください。 「やはり、こういったテーマを扱うと当然いろんな意見が出てきます。社会問題などを扱うと何でもそうだと思いますが、皆さんそれぞれ異なる価値観を持っていらっしゃるので、当然厳しい意見もいただいています。“子宮頸がん”という病気を登場させた理由は、作中で弥生(有村架純)が会社の後輩に何度も『検診に行きなよ』と言っているように、皆さんにも意識してほしいという思いがあるからです。中絶に関しても、僕たちは中絶をすることが悪くて産むことが正しいとは全く思っていなくて。人それぞれで考え方や抱えているものも違うので、正解はないと思っています。間違って捉えられてしまわないような伝え方を心掛けてはいますが、これに関しては本当に難しいテーマだと思います。なので、デリケートなことを題材にして描いているという意識を常に持ち、いろんな人の意見に耳を傾けながら、常に一度胸に手を当てて考えた上で作るようにしています」