タイに渡って大麻農家になった男の挑戦。「堂々と大麻を栽培して吸うのが夢だった」
15歳で大麻と出会い、20歳で決別するも…
doscoiさんと大麻の付き合いは20年以上に及ぶ。15歳で大阪のレストランでアルバイトを始めたとき、先輩から勧められてジョイントで吸ったのが初体験だった。 「笑いが止まらなくなるし、見るもの聞こえてくるものすべてが楽しい。炊飯ジャーのお米を食べたら、味わったことがないほどおいしかった」 その後、若気の至りで違法薬物を一通り経験したが、寝つけるし食欲も湧いて人間的な営みができる大麻に耽溺するようになる。 しかし、友人が逮捕されるケースを目の当たりにして、20歳を超えたころには大麻との関係はすっぱり切れた。 大阪でバーテンダーなどをしていたdoscoiさんだったが、25歳のときに転機を迎える。友人の祖父が亡くなり、岡山県の2000㎡もの田畑が休耕地になり、譲り受けることとなったのだ。 「自然に触れたい気持ちから米作りを始めましたが、最初は失敗続き。それでも、自分の努力と自然の恵みで育ったコシヒカリを食べてみると、とてもおいしかった。イチゴの露地栽培なども手掛けて、農協に卸したりして経営は順調でした。ただ、農業に慣れてくるに従って、『大麻を育てられたらな』という思いをずっと抱えていた」 大麻栽培への尽きない渇望を抱えるdoscoiさんに朗報となったのが、’22年のタイの大麻解禁だった。市中の店舗で堂々と販売されている様子がニュースで流れ、一大決心。タイに渡ったのが昨年2月だった。
農業で培った経験は大麻栽培に役立った
「タイを訪れたことはなかったけれど、世界中から集まった大麻フリークに、自分のノウハウで育てた大麻がどのように評価してもらえるか。挑戦心がみなぎりました」 日本に留学経験があったタイ人女性を通訳に物件を探し歩き、飛び込みでビルの賃貸契約を交わした。 その後、ライセンスの取得といった事務手続きや、プランターや配管などの備品を準備。2か月かかってようやく種をまけた。 農業の経験は、大麻栽培に生きている。イチゴ栽培で用いられる、よく実る優れた枝を切って新たに植えるクローンという手法を転用。 これにより、種から育てる時間が省けるとともに、優秀な株を広げられる。水まきは一日に1回で、植物に合った温度で与えるという鉄則もそのまま生きる。大麻の場合、それは25℃前後だ。 収穫した大麻を乾燥させる際は、栄養をしっかり実に落とすため、米と同じく花穂を下に向ける。培った技術を転用したうえで、試行錯誤も欠かさない。 「ココナッツを砕いたココという土が水はけが良くて、大麻に合うとわかりました。うちはオーガニックなので、どうしても生産量にムラが出てしまう。だから、収穫を上げるために挑戦が必要なんです」