ホンダ「WR-V」は「マッタリ」してる!新コンパクトSUVを350km試乗して驚いたハンドリング、実感した大人気のワケ
車格としては、ホンダ国内市場向けSUVは現在、「ZR-V」、「Vezel」、そして「WR-V」という商品構成だが、「WR-V」のハンドリングは他の2モデルとは異質だ。 ただし、高速道路に乗って車速域が上がると、マッタリ感を維持していても、コーナーへの進入が緩慢になったり、コーナーリング中にロール量が大きくなったりすることがないから、これまた不思議だ。 エンジンは、1.5Lガソリンのみだが、マッタリした走りの中では必要十分な出力とトルクがあり、クルマ全体の動きが重ったるいと感じることはない。 ■ 最大の特徴はパッケージング 都心を出て、東京湾アクアラインを経て千葉県房総半島などでワインディング路や、未舗装路面なども走行した。 アウトドアに特化する本格的な四輪駆動SUVではない前輪駆動車であるが、最低地上高もこのクラスとしては十分にあり、アクティブに遊ぼうという人たちにとっては、必要十分なSUVだと感じた。 その上で、最大の特徴は後席スペースの広さや、荷室の広さだ。特に荷室は、リアゲートを開けた瞬間に「広い!」と思わず声が出てしまうほどだ。 そのほか、先進運転支援システムのホンダセンシングを利用したが、周辺のクルマの動きに対する対応力や、車線逸脱防止の効き具合など、上級SUVに匹敵する精度を体感することができた。 こうして様々なシチュエーションで乗り進める中で、自然とロングノーズに対する違和感は消えていった。 以上のようなWR-Vの商品性については、ホンダが昨年後半に都内で報道陣向けに実施した先行説明会の際、開発責任者らから詳しい紹介があった。
■ インドで生産 それによれば、開発を本格化させた時期がコロナ禍の2021年で、ホンダのアジア圏内における戦略車としてタイのホンダR&Dアジアパシフィックで、日本と製造拠点があるインドも含めたプロジェクトチームを立ち上げて開発をスタートさせた。 コロナ禍であり、オンライン会議での協議が多く、商品企画、開発、実験などで通常のプロセスとは大きな違いがあったという。 そうした中でWR-Vの商品コンセプトを検討した結果、願わくはコロナ禍が終焉に向かえば、国や地域を問わず人々の生き方に対する考え方が大きく変わり、それに伴い「人とクルマ」との関係にも変化が生じることを念頭に置いた。 結果的に、人々の多様性を受容できる自由さや躍動感を開発テーマとして、WR-Vの量産に向けた動きが進んだのだ。 こうして誕生したWR-Vは、日本市場向けでは内装の加飾など一部でアレンジされているが、導入する国や地域で走りやハンドリングの仕様はおおむね同じだ。 要するに、今回の試乗で筆者が感じた、他のコンパクトSUVとの違いこそ、ホンダが目指した多様性なのだと言えるだろう。 なお、WR-V日本仕様は全てインド生産であるが、内外装の質感、そして走行中の性能評価基準であるNVH(ノイズ=音、バイブレーション=振動、ハーシュネス=路面からの突き上げ)について、ホンダが日本国内で生産する他のモデルと比べて大きな差を感じる場面がなかったことを付け加えておきたい。 桃田 健史(ももた・けんじ) 日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。 ◎Wikipedia
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