ハザードマップ、声で案内 視覚障害者向けアプリ広がる 避難に活用、「命に直結」・能登地震1年
災害時の危険箇所を示すハザードマップを読めない視覚障害者向けに、避難所などの情報を音声で読み上げる防災アプリを導入する自治体が増えている。 【写真】紙のハザードマップの問題点について話す石巻視覚障害者福祉協会の立身憲一会長 視覚障害者からの要望を受け、支援に取り組むNPO法人が監修して4月にサービスを開始。各地で自然災害が相次ぐ中、担当者は「障害者が命に関わる情報にアクセスするためには、自治体の対応が必要だ」と強調する。 NPO法人「日本視覚障がい情報普及支援協会」(東京)が企画・監修した。利用者の位置情報を全地球測位システム(GPS)で特定し、近くの避難場所までの経路や周辺の災害情報を読み上げる。サーバーの維持管理費を負担する自治体で利用でき、これまでに青森、秋田、富山、熊本の4県、神戸、福岡、熊本の3市と東京都内の5区が導入。能登半島地震で被害を受けた石川県内でも使える。 能登地震を踏まえ、今年4月から導入した富山県防災・危機管理課の担当者は「障害者に対し、どのように情報を伝えるかが課題だった」と明かす。 宮城県の石巻視覚障害者福祉協会の立身憲一会長(74)は東日本大震災から数年後、市職員からハザードマップを手渡された。しかし、点字の記載もない「ただの紙」。使い方の説明に黙って耳を傾けたが「ハザードマップが何なのか結局分からなかった」と振り返る。 今年11月に福祉関係者から、他県で防災アプリの導入が始まっていることを聞いたといい、「自分の現在地や近くの避難所を教えてくれるのなら便利だと思う。地元でも早く取り入れてほしい」と話した。 厚生労働省の推計によると、全国の視覚障害者は2022年12月時点で約27万人。宮城県視覚障害者福祉協会の宇和野康弘理事長(70)は「視覚障害者にとってハザードマップはとても難解な情報媒体。情報が命に直結する災害時にはアプリが有効だと思うので、導入していない自治体は前向きに検討してほしい」と訴えた。