パワハラ問題乗り越え復帰の伊調馨は東京五輪で勝てるのか?
吉田沙保里を破ったマルーリスがライバル
リオ五輪では53kg級に出場しているマルーリスだが、もともと上の階級で戦っていたのを、吉田にチャレンジするため、厳しい節制と減量を克服した末の金メダル獲得だった。今年から始まった当日計量というシステムを考慮した場合、57kg級はマルーリスにとって大きすぎるというより、最適な階級だろう。もし彼女と伊調が並んだら、伊調のほうがほっそりして見えるかもしれない。 最後に、伊調自身も口にしていることだが、対戦相手ではなく己の中にわずかだが懸念がある。復帰戦は、すべて圧勝だったのだが、2試合目は久しく見たことがなかった先に失点するという展開から始まった。その失点の原因について、直接的には多くを語らなかったが、レスリング選手としての自身の復調度をこう分析している。 「技術は、単発としては質が上がっているのかなと思います。でも、技の流れとして上手くいかない部分がありました」 経験も知識も増え、もともとのポテンシャルの高さも合わさって、約2年というブランクにも関わらず、ひとつひとつの技術の精度は高まっている。しかし、試合から遠ざかっていた影響は皆無ではなく、自分の得意な試合展開を広げるコツのようなものを再現するに至っていないのだ。 東京五輪を目指すための第一歩となる全日本選手権まで、あと2ヶ月強。それまでに、伊調がいう「流れ」は、試合でスムーズに再現されるのか。 (文責・横森綾/フリーライター)