パワハラ問題乗り越え復帰の伊調馨は東京五輪で勝てるのか?
レスリング女子で五輪四連覇を果たした伊調馨(34、ALSOK)が14日、「全日本女子オープン選手権」でリオ五輪以来、2年2ヶ月ぶりとなる復帰戦に挑んだ。 「かなり痩せたらしい」 「初めての当日朝計量に無理はないのか」などの不安材料もささやかれたが、全3試合をテクニカルフォールとフォール勝ちという圧倒的な強さで優勝し大会最優秀選手賞も受賞した。試合後に「レスリングを再開できた幸せ、喜びを感じながら試合ができた」と語った伊調だが、今年の春先には、選手としてレスリングを続けることは「自分勝手なんじゃないか、わがままなんじゃないか」と思い悩んでいた。 今年2月末、「パワハラのために伊調の現役続行が難しくなっている」という内容の告発状が、内閣府に提出されていたと公表された。この告発は、日本のスポーツ界で、今も数珠つなぎに続く“#Metooムーブメント”の先駆けともいえる出来事だったが、以後、野次馬のような興味本位の目線も含め、五輪四連覇の金メダリストは、これまでとは違う種類の注目を集めた。 一時は自宅に戻ることもできず、混乱を避けるためホテル暮らしを余儀なくされた伊調は、自らの状況を心配した周囲の配慮に感謝しつつも、本当に選手としてレスリングを続けたいのか、葛藤していた。 「たくさんの人に、ご迷惑やご心配をおかけしました。自分はレスリングを続けたいのかと考えると、心が苦しくなる。でもやっぱりレスリングをやりたい。だけどやっぱり苦しい。でも、レスリングをしたい。やっぱり、挑戦できるものなら挑戦しないと、それは自分自身に負けているのかなと思ったりもしました。苦しい気持ちに襲われても、やっぱりレスリングをしたいと思う。自問自答を繰り返していました」 レスリングに再び取り組むのか、このまま遠ざかるのか、逡巡しながら、4月には1日に2回の練習をする、選手としての練習をする生活に戻った。 まだ復帰を決断できてはいなかったが、「やりたかったら、やってみたらいいんじゃない」と周囲から何度も言われるうちに、少しずつ「勇気をもらい」、12月の全日本選手権に出場して、もう一度、日本代表を目指すと決めた。