「余命1か月から9年が経過」“希少乳がん”の看護師が、200回の抗がん剤治療をしながらやったこと
ビタミンC点滴は在宅でも可能
昨年のPET/CT検査では、画像上、がんがない状態という結果が出たひろさん。今も抗がん剤治療の翌日には、必ず超高濃度ビタミンC点滴を行っている。その効果について西脇医師は次のように解説する。 「超高濃度ビタミンCは抗酸化物質で、通常の抗がん剤の副作用もかなり和らげてくれます。抗がん剤にも併用されるようになれば治療の効果も上がりますので、そういった意味でもビタミンC点滴が保険適用になってくれれば良いと思います」 ビタミンCといっても市販されている経口のビタミン剤とは異なり、超高濃度の成分を血液中に注入する。経口のビタミンCは大量に摂取してもほとんど体外に排泄されてしまうが、点滴なら血中濃度を上げることが可能だ。 「ビタミンCはもともと抗酸化物質で、身体の疲れなどをとってくれるのですが、がんに対しては酸化物質として作用するという特殊な性質があります。 がんのエサはブドウ糖。そのブドウ糖とよく似たビタミンCを、断糖した状態で投与すると、ビタミンCががん細胞に入っていく。大量のビタミンCががん細胞の中に取り込まれると、過酸化水素という毒性の強い酸化物を作り出し、それががん細胞を死滅させていくのです」(西脇医師) 抗がん剤治療を行っている患者は、CVポートと呼ばれる点滴用の医療器具が皮下に埋め込まれていることが多い。そのため、このCVポートから超高濃度ビタミンC点滴を行うことができる。ひろさんもそうだ。 「彼女はナースですが、一般の方でも、練習すればCVポートからの超高濃度ビタミンC点滴が自分でできるようになります。がん治療の場合だと、超高濃度ビタミンC点滴は週2回を推奨していますが、これだと遠方の方は現実的に難しい。 CVポートを埋め込めば在宅での点滴が可能です。在宅だと時間的に余裕が生まれるし、治療費も安くなる。また、がん細胞は夜中に増殖しますので、その時間に点滴できるのも効果的です」(西脇医師) 西脇医師によれば、投与するビタミンCの量は、血液中のビタミンC濃度を測定して決定するそう。典型的な例では週に2回の点滴を6か月間継続、その後の経過が良ければ週1回を6か月、さらに2週に1回を1年間、その後は月に1回行う。ビタミンCの量と点滴頻度は病状によって変わるとのこと。ひろさんは現在、月1回、宅配便で届く超高濃度ビタミンCを自己点滴で続けている。彼女が他のがん患者さんに伝えたいのは、次の言葉だ。 「どんな治療もうまくいく場合もそうでない場合もある。確かなのは、諦めたらゲームオーバーということです」 Graceひろ●1963年、東京・品川生まれ。がんと共存中の乳がんサバイバーナース。夫と3人の娘のうち、長女、三女は国際結婚し、海外移住。現在は次女とその娘と都内在住。 西脇俊二医師●精神科医師、精神保健指定医、超高濃度ビタミンC点滴療法認定医。ハタイクリニックの院長として診療をしながら、メディア出演、医療監修、執筆など多くの分野で活躍中。 取材・文/ガンガーラ田津美