なぜ女子スピードスケート1500m銀メダルの高木美帆は金メダルへ「0秒44」届かなかったのか…「悔しい…本当にそれだけ」
北京冬季五輪まで5大会連続出場を果たしているブストだが、2006年のトリノ、そしてソチを制し、平昌でも銀メダルを獲得した3000mに今大会は出場していない。 今シーズンのワールドカップの1500mでも2位が最高で、世界ランキングも7位だった。しかし、35歳のレジェンドは2010年のバンクーバー、そして平昌で金メダルを獲得した1500mにターゲットを絞り、濃密な経験をフル稼働させながらピークを合わせ、貫禄を漂わせる完璧な滑りで5大会連続、通算6個目の金メダルを手にした。 対照的に平昌以降の4年間で、オールラウンダーとしての存在感を一気に際立たせた高木は、今大会では3000mと1500mに加えて前回銅メダルの1000m、五輪で初めて挑む500m、そして五輪連覇がかかる団体パシュートの5種目に出場する。 13日間で最大7レースが待つ過酷な道を、あえて選んだ高木の脳裏にはピークという概念はない。だから、4年に一度の五輪で再び負けたことへの言い訳もしない。憧憬の思いを抱き、その背中を追い続けたブストへレース後に握手を求め、敬意を込めて抱き合った心境を、高木は銀メダルと結びつけながらこう語っている。 「自分の実力がブスト選手よりも劣っていた、ということだと思っています。この舞台においては、私の実力が2番だったと」 息つく間もなく次の種目はやってくる。メダルが確定するレースは13日の女子500m決勝だが、前日の12日には団体パシュートの初戦が待っている。 「いまは頭がまったく働いていないんですけど、いったん気持ちと体を整理して、まずは団体パシュートに向かっていきたいと思っています」 記者会見の席上で切り替えを強調した高木は、平昌で獲得した金、銀、銅の3つのメダルに今大会での銀メダルを加えた計4個を持って、冬季五輪史上における日本選手で最多のメダルホルダーになった。歴史に名を刻んだ感慨に浸る間も、もちろんその気もなく、自分だけにしかできない壮大なチャレンジを加速させていく。