今年の梅雨明けはいつごろ?雷が鳴ると梅雨明け説は本当?梅雨にまつわる疑問を専門機関に聞いてみた!
ジメジメして雨ばかり、すっきり晴れない日が続く梅雨。おでかけの予定も立てられず、梅雨明けを心待ちにしている人も多いのでは? 【画像】日本の南側に梅雨前線が位置しているのがわかる では、梅雨明けはどのように決まるのか、ご存知だろうか。ほかにも「そもそも梅雨はなぜ雨が降る?」「北海道には梅雨がないって言うけど本当?」など、よく考えると梅雨については知らないことがいっぱい!そこで、梅雨にまつわる疑問について、気象庁 名古屋地方気象台の気象情報官・常盤実さんに話を伺った。 ■梅雨に雨が降るのはどうして? ―― そもそも、梅雨はどうして雨の日が多いのでしょうか? 【常盤】夏が近づくと、南から暖かく湿った空気を持つ「太平洋高気圧」が張り出してきて、北にある冷たい空気を持つ「オホーツク海高気圧」とちょうど日本のあたりでぶつかることで、梅雨前線ができます。この前線に向かって、「太平洋高気圧」の端から回り込むように、暖かく湿った空気が流入することで雲が発生し、雨を降らせるのです。 ■北海道には梅雨がないって本当? ―― 北海道には梅雨がないと言われますが、本当ですか? 【常盤】梅雨前線は北や南に移動しますが、北海道まで北上することはあまり多くありません。年によっては、北海道のあたりまで北上し、一時的に前線が通過して雨が降ることはありますが、前線が定常的に留まることはありません。そのため、長期間にわたって雨や曇りの日が続く「梅雨」は北海道にはないと言われています。 ■今年の梅雨入りが遅かった理由は? ―― 天気予報やニュースでも大きく取り上げられる、「梅雨入り」と「梅雨明け」。どのように決まるのでしょうか? 【常盤】実は、梅雨入り・梅雨明けの時期が“確定”するのは毎年9月の初めごろ。春から梅雨の時期へ、梅雨の時期から夏へと気候が移り変わる際には、平均して5日間程度の「移り変わり」の期間があり、その期間のおおむね中日をそれぞれ「梅雨入り」「梅雨明け」としています。梅雨の時期に発表している梅雨入り・梅雨明けの日にちは、あくまで速報値なのです。 ―― 今年の例で言えば、関東や東海、近畿では6月21日ごろに梅雨入りしたとされていますが、これはあくまで速報値で、見直される可能性もあるんですね。 【常盤】はい。速報値は、その日までの天候経過と1週間先までの見通しをもとに、梅雨入り・梅雨明けを発表しています。たとえば、今年の6月21日に発表された愛知県の天気予報を見ると、その後1週間は雨や曇りの日が多い予報となっているのがわかると思います。 ―― 速報値とはいえ、今年の梅雨入りは全国的に例年よりも遅めでしたが、その理由を教えてください。 【常盤】梅雨前線が日本から離れた南の海上に位置していて、前線や湿った空気の影響を受けにくかったためです。前線が南に位置していた理由は、「太平洋高気圧」の北への張り出しが弱かったこと、偏西風が日本付近で南に大きく蛇行していたことの2つが考えられます。確かに6月21日の梅雨入りは比較的遅いほうではありますが、気象庁の過去のデータを見ると、1951年には6月28日ごろに梅雨入りしているなど、2024年よりもさらに遅い記録もあります。逆に、梅雨入りが早かった1963年には5月4日ごろという記録もあるので、年によってかなり幅がありますね。 ―― そんなに昔のデータもあるんですね! 【常盤】1951年以降の梅雨入り・梅雨明け時期の一覧は、気象庁のサイトで見ることができます。ちなみに、梅雨入り・梅雨明けの速報を、気象情報として発表しはじめたのは1986年から。1963年より前については不明なのですが、1964年~1985年は「お知らせ」として発表していました。 ■梅雨入りが遅かったら梅雨明けも遅い? ―― では、どのような気象状況になれば、梅雨は明けるのでしょうか? 【常盤】「太平洋高気圧」が南からもっと張り出してくると、前線が押し上げられるようなかたちで北上します。また、2つの高気圧の差が曖昧になったり、湿った空気が供給されなくなったりすることで、前線がはっきりしなくなる場合もあります。このような気象状況になると晴れの日が多くなるので、梅雨明けと言えるでしょう。 ―― 今年のように梅雨入りが遅かった場合、梅雨明けも遅くなりますか? 【常盤】梅雨入りが遅かったからといって、梅雨明けが遅くなるわけではありません。梅雨入りの時期にかかわらず、だいたい7月後半には「太平洋高気圧」の勢力が強くなり、梅雨が明けることが多いです。そのため、梅雨入りが遅いほうが、梅雨の期間は短いかもしれませんね。とはいえ、梅雨明けの時期も年によって幅があるので、7月後半というのもだいたいの目安として考えておくのがいいと思います。 ■「雷が鳴ると梅雨が明ける説」は本当? ――「雷が鳴ると梅雨が明ける」とも言われますが、それはなぜでしょうか? 【常盤】梅雨の終わりごろになると、「太平洋高気圧」が前線のある北側へと張り出してくるので、前線に対して湿った風がどんどん吹き込みます。そうすると、雲が次々と発達していくため、雷が発生しやすくなります。実際に梅雨明けのタイミングで雷が鳴っている年もあるようです。ですが、そもそも梅雨前線は「太平洋高気圧」から湿った風が吹き込むことによって発生するもの。梅雨の終わりだけでなく、梅雨の時期は雷が発生しやすいと思っておいたほうがいいですね。 ―― ありがとうございました! テレビのニュースや天気予報でよく耳にする「梅雨入り」や「梅雨明け」。どのように決められているか、知らなかった人も多いのではないだろうか。週間の天気予報を見ながら、梅雨明けの日を予想してみるのもいいかも。一方で、梅雨は雨による災害が起きる可能性もあるので、出かける際は天気予報のチェックを忘れずに。夏のおでかけ先を考えながら、梅雨明けを楽しみに待とう! 取材・文=溝上夕貴