大阪府の宿泊税引き上げ、対象拡大で適用は万博後か 訪日客のみの徴収金は公平性課題
大阪府が宿泊客から徴収する宿泊税の課税対象を拡大し、課税額も引き上げる条例改正案が5日、府議会で可決された。徴収を担う宿泊施設が4倍近くに増えるため周知が不可欠となり、適用時期は未定。府は増加する税収を、来年4月に開幕する2025年大阪・関西万博で増える訪日客らの受け入れや誘客に充てる一方、訪日客に限定して負担を求める徴収金の導入も検討するが、公平性への懸念などといった慎重な意見が相次いでいる。 府は平成29年1月、観光客の受け入れ環境整備や誘客事業の財源とするため宿泊税を導入。観光案内や旅行時のトラブル相談に対応する「トラベルサービスセンター」の運営や、大阪市内の目抜き通り・御堂筋でのイルミネーションの開催などに充ててきた。 今回の条例改正の議論は、観光客数が新型コロナウイルス禍から回復していることを受けて進められた。令和5年には府内訪日客が979・8万人とコロナ禍前の元年比で85%まで戻り、来年4~10月の万博でさらなる増加も見込まれるため、府は今年4月から有識者の検討委員会で見直しを始め、改正に至った。 今後は、徴収事務の負担が増す宿泊事業者や、税負担が増す宿泊客への周知が不可欠となる。今回の見直しで課税対象となる1人1泊の宿泊料金の範囲が、7千円以上から5千円以上に拡大したことで、対象施設は約1100施設から約4100施設に増加する。 万博開幕前に適用できれば税収の拡大が見込めるが、総務相の同意も必要になるため、時間がかかりそうだ。吉村洋文知事は5日の府議会閉会後、記者団の取材に「十分な周知期間も踏まえた上で適用したい」と述べ、導入時期については「万博開幕後になるかもしれない」と明言を避けた。 一方、今後の観光施策で注目されるのは、増加している訪日客のみを対象にした徴収金制度の可能性。府内では訪日客らによる交通混雑などのオーバーツーリズム(観光公害)は京都などに比べると深刻化していないが、府は訪日客からの徴収金によって将来の観光公害に備えたい考えだ。観光客誘致と公害防止のバランスを取るためにも、徴収金の有効性が指摘されている。 吉村氏は徴収金を街の美化やさらなる受け入れ環境の整備に充てるため「訪日客に一定の協力をお願いすべきだ」と強調。検討委がインドネシア・バリ島で観光資源の保全を目的に外国人に課している徴収金など海外の先行事例をもとに導入の是非を議論している。