大阪府の宿泊税引き上げ、対象拡大で適用は万博後か 訪日客のみの徴収金は公平性課題
ただ、委員からは日本と各国が結ぶ租税条約などを念頭に「外国人への不平等、差別的な扱いは許されない」との声が上がる。博覧会国際事務局(BIE)のケルケンツェス事務局長も今年4月、府市側に万博閉幕後の導入を求めるなど慎重な意見が相次いでいる。
■ニセコ町は1泊最大2000円、姫路市も訪日客限定検討
観光需要の回復は全国的に広がり、各地で宿泊税の見直しや導入の動きが加速している。北海道ニセコ町は11月から町内での宿泊時、料金に応じて1人1泊最大2千円を徴収。沖縄県は令和8年度の導入を目指す。京都市は課税額引き上げを検討するほか、松井孝治市長が今年6月、斉藤鉄夫国土交通相に、市営バスや地下鉄で市民の運賃を観光客に比べて安く設定できる制度の実現に向け支援を求めた。
いずれも観光客の増加に伴う受け入れ環境の整備や観光公害対策が背景にあるものの、訪日客だけでなく国内観光客らにも負担を求める。一方で大阪府と同様に訪日客限定の制度を検討したのが兵庫県姫路市だ。
同市では城内の遺構の復元や修理など維持管理費の確保を目的に、入城料の見直しを検討しているが、清元秀泰市長が今年6月、「外国の人は30ドル払っていただき市民は5ドルぐらいにしたい」との意向を示した。
ところが市はその後、18歳以上で大人千円とする現行の入城料を増額した上で、市民には割引を適用する方向に軌道修正。市民以外の国内観光客らにも負担を求める形となった。訪日客向けには、周辺飲食店での割引や手荷物預かりなどのサービスを加えた料金プランを設ける方針という。
清元氏の発言を巡っては庁内や市議会から「城のイメージを下げる」などと慎重意見が続出。市の担当者は「市長の発言はあくまで国際会議で外国人の方に向けた内容で、検討は訪日客限定ありきではなかった」と説明する。訪日客向けの料金設定は民間で広がりつつあるが自治体が導入するには課題が多そうだ。(山本考志、藤谷茂樹)