「これでは逃げられない」台風でまた洪水起きたらどうすれば…住民困惑 増やしてと要望したのに緊急避難場所が26→10ヵ所に激減
減る自治体の洪水時指定緊急避難場所
2019年10月の台風19号災害で災害救助法が適用された長野県の43市町村を対象に、信濃毎日新聞社が行ったアンケートで、洪水時の「指定緊急避難場所」が減っている実態が明らかになった。 【地図】長野県飯山市の場所
長野県の飯山市、5年前の台風で家屋浸水多数も指定避難所を集約
千曲川支流の皿川堤防が決壊し、市役所や住宅が浸水した飯山市。内水氾濫も発生して家屋の浸水被害は約630戸に上り、1人が災害関連死に認定された。市は災害を踏まえ、洪水時の指定緊急避難場所を兼ねている指定避難所の配置を見直し、災害前の26カ所を集約して4月に10カ所とした。
限られた職員と運営充実、背景に
背景にあるのは、指定避難所に配置できる職員数が限られることだ。指定避難所は、自宅などに帰れない被災者らの宿泊も想定して受け入れ態勢を整える。市は、避難所開設の他に被災者の受け付けや介助、支援物資の提供などに人手が必要になると説明。大規模な指定避難所なら、1カ所につき10人程度は配置したい―とする。
説明会や意見公募経て決定
台風19号災害で広範囲が水に漬かった飯山地区で実際に指定避難所に身を寄せた人数を基に、今後の水害で想定される避難者数を浸水想定区域内人口の25%程度と試算した。配置できる職員数や支援物資のスペース確保などを考慮し、指定避難所の見直し案を検討。住民説明会や意見公募を経て決定した。
「必要な人員を割くため」
ただ、10カ所のうち優先して開設する8カ所の想定収容可能人数は計3千人。市内の浸水想定区域内人口1万人余の3割弱にとどまる。 台風19号の際は自力で避難できないお年寄りを、市職員が自宅まで迎えに行ったケースもあった。市危機管理防災課の高橋昇一課長はこうした事例も踏まえ「自分で身の安全を確保できない人のために行政は対応する必要がある」と強調。必要な人員を割くため、避難所を集約する必要があるとして理解を求める。
「これではとても…」住民懸念
「これでは住民はとても避難できない」。千曲川右岸に位置する飯山市瑞穂地区の区長会長、吉平周三さん(70)は懸念を口にする。今回の見直しで指定避難所となった同地区向けの2カ所の想定収容可能人数は計120人。だが、同地区の浸水想定区域内人口は約370人に上る。