サントリーホールディングス 「65歳定年制」と健康維持問題の解決 経営トップが健康リスク予防に理解、施策を実行に移しやすい
【わが社の「健康経営」】サントリーホールディングス(3) 先進国はどこも少子高齢化が進行中だ。日本でも生産年齢人口(15~64歳)の割合が減り、将来の働き手不足が深刻な問題になっている。人工知能やオートメーションなどの機械化でも全て補うことは難しく、企業の生産性の低下につながる。一方、高齢者が増えると医療福祉といった社会保障の負担は重くなる。この状況を打開するのが、60代でも健康で優れた能力を発揮する従業員の存在だ。そんな人材を増やそうとしているのが、サントリーホールディングスである。 【労働生産性の向上に】 近年、60歳の定年後に65歳まで再雇用する企業が増えた。厚労省の「65歳超雇用推進助成金」の制度もある。だが、年齢が高くなるにつれ、体力は落ち、病気発症のリスクも高くなるからと、企業によっては渋々、参入というところも。 「当社は2013年に正社員としての雇用を65歳まで延長する『65歳定年制』を導入しました。65歳まで正社員でこれまで通りに働けるという安心感、離職率の低下、優秀な人材の確保になると考えています。結果、労働生産性の向上につながりメリットは大きい」と、同社グループ健康推進センター池田美紀部長は話す。 一般的に55歳を過ぎると医療費負担が増えるといわれ、60歳で定年した後、生活環境の変化でメンタル不調に陥る人もいる。60歳定年は、体の不調の引き金になることがあるのだ。65歳の定年は打開策の一助になる。同社は、2020年には65歳以降の再雇用制度も導入したという。 「創業時から人的資本(人材投資)を行ってきた企業風土から、経営トップの健康経営の関心も高い。将来の健康リスクを予防する重要性をトップが理解し、必要な施策を実行に移しやすいのです」(池田部長) 【グループ企業も同じ運用でカバー】 大きな企業は65歳定年制度や、健康経営を実施するだけの基盤を持っている。だが、中小企業では費用がかさみ、制度を作る労力も必要なため簡単にはいかない。 生命保険会社の調査では、大企業の半数以上が健康経営を実施しているが、中小企業は約3割にとどまる。この状況を変えようとしていた。