SHAMISENを世界の共通語に 多彩な音色で魅了する三味線プレイヤー・上妻宏光
邦楽からクラシック、ロックにオリジナル楽曲まで、津軽三味線の多彩な表現を追求する上妻宏光は、自らを「三味線プレーヤー」と名乗る。海外でも積極的に演奏し、近年は後に続く次世代の奏者も出てきた。来年でソロデビュー25周年。今後も変わらず三味線の可能性を広げるとともに、「自分の技術を人に伝えていきたい」と語る。 茨城県出身。父親の趣味であった津軽三味線の音色に引かれ、6歳で弾き始めた。弦楽器でありながら、撥(ばち)をたたきつけるように弾く打楽器的な要素も併せ持ち、上妻は「世界でも類を見ない楽器」と語る。 習い始めると、周囲の大人からは「子供なのに珍しいね」と言われた。三味線を持ち、ロックバンドで活動していた10代の頃は「三味線がなぜロックバンドに?」といぶかしがられた。 「日本の伝統楽器がそう受け止められることが悲しかった。ギターと同じように、一つの弦楽器として見てもらいたい。三味線の地位や認知度を高めたいと、強く思いました」 津軽三味線の演奏は、門口に立って演奏する門付(かどづけ)芸であった歴史から即興が主体で、楽譜がほとんどない。西洋音楽のように「100年後でも再現できる音楽をつくりたい」と、「紙の舞」や「NIKATA」などオリジナル楽曲を制作。津軽三味線らしい奏法だけでなく、西洋の楽器ともセッションできるさまざまな音色を研究した。 津軽三味線といえば「昔は日本海!地吹雪!みたいなイメージが強かった」と笑う。今ではどんなジャンルのアーティストとコラボしても、違和感を抱かれることはない。 伝統を未来に継ぐには、「僕みたいに新しい可能性を広げようという人間も必要だし、元来の津軽三味線を追求する人間も絶対に必要」と語る。海外では「ジャパニーズギター」などと紹介される三味線を、「カラオケやスキヤキのように世界の共通語にしたい」と意気込む。空港で荷物の中身を問われたら、必ず「『This is SHAMISEN』と答えています」。(藤井沙織) ◆上妻宏光 宮田大 Duo Concert Tour -月食-
三味線プレーヤー、上妻宏光と日本を代表するチェロ奏者、宮田大による初のデュオコンサート。曲目はドビュッシー「月の光」▽ピアソラ「『タンゴの歴史』よりナイトクラブ1960」▽上妻宏光「NIKATA」-など。11月16日に住友生命いずみホール(大阪市中央区)、17日に神戸朝日ホール(神戸市中央区)。いずれも午後2時開演、6000円。キョードーインフォメーション(0570-200-888)。