【陸上】クローズアップ/400m・中島佑気ジョセフ「覚悟を決めて、死に物狂いで」ブダペストの悔しさをパリ五輪にぶつける
パリ五輪に向けた戦いがいよいよスタートした。春のトラック&フィールドシーズンから注目の選手を紹介する。 400m世界陸上代表の中島佑気ジョセフが富士通へ「結果を出すのが仕事」米国拠点に世界へ 「最後の壁が破れなかった」 大躍進を遂げた1年と言っていいだろう。6月の日本選手権で初優勝。個人初の世界大会だったブダペスト世界選手権では準決勝に進み、3着で決勝進出にあと一歩まで迫った。さらに目を引いたのが記録水準。5月の静岡国際(45秒46)を皮切りに、45秒15をマークした日本選手権まで4試合連続で自己新をマーク。その後も、ブダペスト世界選手権準決勝で日本歴代5位の45秒04を出したのをはじめ、海外レースを含めて安定して45秒1前後を刻んだ。それでも、中島は悔しさを隠さない。 「結果的に見れば、45秒51だった22年までの自己ベストを、約0.5秒短縮することができました。それまでは45秒台は3回しか出していなかったのですが、23年は45秒前半でずっと安定させることができた。国内、海外問わず、大きい舞台でも、本当にどこに行っても安定して45秒前半を連発できたので、安定感はピカイチだったと思います。 いろいろな大会を経験できたことも、ものすごく価値があります。ブダペスト世界陸上では、個人で初めて世界大会のレースに出場でき、準決勝まで行って3着。単独での海外遠征も初めて挑戦し、ダイヤモンドリーグにも2度出場できました。何度も世界と戦うことができ、その中でも自分の良さを出して勝負するという感覚はつかめたと思います。 ただ目標は、世界陸上のファイナルと日本記録の更新。それを考えると、45秒1台~0台を連発しているのに、なぜか(44秒台への)最後の壁が破れない。そういうもどかしさを抱えながらのシーズンでしたね。45秒前半を何度も出せたことは、周囲からすごく評価していただきました。でも、やっぱり目指してるのはそこじゃないので」 これほどまでの成績と、安定したパフォーマンスを発揮できた要因はどこにあるのか。400mのレース戦略を含め、その「ブレイクスルー」のポイントに中島は22年のオレゴン世界陸上を挙げる。 「今までは、消極的なレースばかりでした。ラスト150mぐらいから上げ始めて、フィニッシュ前に追いつくか、追いつかないか。前半に内側から追い上げられた時には、もう自分のペースがわからなくなってしまうこともありました。自分でレースを作れない、受け身のような姿勢だったんです。 でも、オレゴン世界陸上の4×400mリレーで速いレースを経験して、自分で少しレースを作れるようになってきました。ひと冬を越えてスピードが上がってきた感覚もあった。だから、それを生かして最初の100mで加速に乗せることを意識し、バックストレートもそのスピードを維持して駆け抜けることを意識しました。加えて、自分の強みである後半でどこまで粘れるか。それを、シーズン前半で試したら、自己ベストをどんどん短縮できました。特に前半の200m通過が0.3~0.5秒ぐらい速くなったことが直結してると思います。後半も、今までと同じぐらいでまとめることができていました。 メンタル面も工夫しました。自己分析を重ねて、自分が最大限のパフォーマンスを出すためにはどういうマインドセットをして臨めばいいのか、それを確立することができたと思っています。だから、緊張し過ぎたり、力んで集中力を欠いたりというところもほぼなくなり、かなり完成度の高い状態をキープできていることが、すごい大きいのかなと思います」