1200年前の陶器から「猫のふみふみ」跡を発見! 猫と人間の友好的な歴史を示す最新例
イスラエル・エルサレム旧市街の城壁の外側にあるシオン山の遺跡で見つかった、1200年前のものと思われる水差しの破片に猫が「ふみふみ行動」をした跡があったとアートネットが伝えた。 シオン山の遺跡では、2007年よりノースカロライナ大学シャーロット校の歴史学部長であるシモン・ギブソンとイスラエルのバル・イラン大学のラファエル・Y・ルイスが共同で発掘調査を行っている。彼らは同遺跡からこれまでに硬貨、陶器、石器、動物の骨、貝殻など、数千点に及ぶ遺物を発見してきた。 これらの遺物は全て、遺跡近くのロイ・ウィザースプーン・マウント・ザイオン研究所に送られ、そこで調査・保存処理が行われるが、同研究所所長のグレッチェン・コッターは最近、家庭で水やワイン、オリーブオイルなどの液体を入れるのに使われていたと思われる水差しの破片に奇妙な刻印があることに気づいた。よく調べると猫の足跡で、爪のひっかき傷とともに、3×3センチの前足の肉球と2×1センチの腕部分の跡があった。おそらく猫は太陽の下、焼成前に乾燥中だった水差しに寄りかかりながら気持ちよく「ふみふみ行動」をしていたと、調査にあたったシモン・ギブソンは推測する。 「ふみふみ行動」とは、子猫の頃に母親の体を前足でリズミカルに踏みつけ、母乳の分泌を促す行動のこと。成猫になっても習慣は残っており、特に安心している時に現れる。これは子猫の頃に母乳を飲んだ時の心地よさを思い出すからではないかと考えられている。 猫がふみふみした跡のある水差しは、考古学者たちがアッバース朝時代(西暦750年から1258年)の陶器を発掘した古代の住宅地の跡から発見されており、9世紀ごろのものと特定された。アッバース朝は、それまでのウマイヤ朝を追い落として成立したイスラム王朝だ。当時、エルサレムの住民にはユダヤ教徒やキリスト教徒もいたが、イスラム教の支配下にあった。ギブソンは、「初期のイスラム教の資料、例えばハディース文学にも猫のことが言及されており、預言者ムハンマドは猫を大変可愛がっていたと言われています」と語った。イスラム教のモスクには猫の立ち入りが許されている。 ギブソンは、これまで古代の遺物から人間の指紋は沢山見てきたが、猫がこねた跡は初めてだという。現時点ではこの水差しの作者がどの文化背景に属していたのかについては不明で、破片は政府当局が保管する。彼は、水差しの破片が見つかった層を引き続き調査するつもりだ。「ちょうど昨日、私たちはそこで紀元前7世紀の陶器のかけらを見つけました。かけらには、陶器がまだ乾ききらないうちに鳥が飛び移った爪跡が残っていたんです。今後も何が出てくるか分かりません」とギブソンは話した。
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