U2、エンヤだけじゃないアイルランドの魅力。ハロウィーンはケルトの収穫祭「サウィン」が元に。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の「怪談」にも通じる
◆ケルト神話 このケルト神話で1番有名なのが『アーサー王物語』でしょう。この『アーサー王物語』舞台はイングランドですがケルト=アイルランドの文化を色濃く映していて「フィン・マックール」と「フィアナ騎士団の物語」というアイルランドの神話がベースとも言われています。 岩から引き抜かれる王の剣の話や、魔術師マリーンの魔法、円卓の騎士(円卓の騎士はケルトの平等性の象徴だそうです)が有名な『アーサー王物語』。 この『アーサー王物語』をはじめケルト神話は、その後の『ハリー・ポッターシリーズ』や『指輪物語』『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジー作品や『ファイナルファンタジー』などのゲームにも大きな影響を与えています。 またケルト文化では、神や妖精、人の住んでいる世界は近く、その境界線が曖昧であるという考え方をしていたそうです。 この考えを象徴しているのが「ハロウィーン」です。 実はハロウィーンとは、ケルトでの大晦日(10/31)に行われる収穫祭「サウィン」が元になっているそうです。大晦日、1年の終わりは、この世とあの世の境界線がなくなり、死者やモンスターが異世界からやってくるとされていました。そこでお化けに仮装して、モンスターたちの目を欺いたのが始まりと言われています。 アイルランドで育ち、ケルト文化に親しんでいた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が日本で「怪談」を書いたのも、妖怪や幽霊が人間と共にいる日本の考え方に共感を持ったのからなのかもしれません。 日本で「ハロウィーン」が受け入れられている理由も、ひょっとしたらこの辺りの考え方に共通点があるからでしょうか。
◆セント・パトリック さて、そんなアイルランドの源流であるケルト文化も5世紀に、キリスト教伝道師のセント・パトリックがキリスト教をもたらしたことで大きく変化します。 このセント・パトリックはイギリスに生まれましたが、16歳の時アイルランドの海賊に誘拐され奴隷として売られ6年間羊飼いとして働かされたそうです。そしてある日、脱出に成功。戻ったセント・パトリックは神学を学び宣教師になります。諸説あるそうですが、ある時、神様から「アイルランドへ戻って布教しなさい」というお告げを受け、セント・パトリックはアイルランドに戻ってキリスト教をもたらし、アイルランドの守護聖人として広く尊敬されています。 このセント・パトリックには数多くの伝説的とも言える話が残っています。 まず、セント・パトリックが布教に向かった当時、アイルランドにはケルト文化そしてドルイド教が根付いていました。そのため伝道師が赴いてもなかなかキリスト教を布教できなかったそうです。 そこでセント・パトリックは本来ドルイド教で火を焚いてはいけない日に、あえて火を焚いて注目を引いたそうです。そして、そのことで罰を受けるかと思いきや、当時のアイルランドの王がセント・パトリックのカリスマ性に感嘆し「まことの神から遣わされた」と信じたといいます。 これによりアイルランドにキリスト教がもたらされました。そしてセント・パトリックは12万人もの人々をキリスト教に改宗させたと言われています。 こんな逸話もあります。アイルランドにはなんと蛇がいないのだそうです。 そのアイルランドに蛇がいないのはセント・パトリックが追い出したからという話があります。 かつてアイルランド南部の湖に賢い蛇がいました。セント・パトリックはその蛇を箱のなかに閉じ込めて湖の中に投げ捨てたといいます。その時セント・パトリックは蛇に「明日になったら出してやる」と約束した上で蛇を箱に閉じ込めたそうで、その湖で漁師たちは箱に閉じ込められた蛇の「もう明日になったかな?」という哀れな声を聞いたという話が残っています。 また、セント・パトリックは太鼓を鳴らして蛇や危険な生き物たちをアイルランドから海へと追いやったそうです。これ以後、これらの危険な生き物はアイルランドの地に触れるだけで死んでしまうのだそうです。 そのためかアイルランドの材木で建てた建築物にはクモが寄り付くことは決してないと、ケンブリッジ大学の書物にも記載があるそうです。