なぜ“ゲレンデ”は都市部で売れているのか? 新型メルセデス・ベンツGクラスの実力を考えた!!!
従来と一線を画した快適性
一言で表現すると、都市型の贅沢な仕様だ。1979年登場以来、大づかみのデザインは不変なので、実際、ユーザーになろうというひと以外にはわかりにくいけれど、何かをガマンするようなクルマではなくなった。 セダンと同等の機能を備え、その上、強力なオフロードの走破性まで持つという、万能ぶりが最新型の特徴だ。高速でずっと踏み続けていると脚がつりそうになるほど重いアクセルペダルや、低回転域でのトルクはたっぷりあるけれど上のほうまで回りたがらないエンジンなどは、みんな“大昔”の話になっている。 実際、路上で乗って、3.0リッター直6ディーゼルエンジンのキャラクターに驚かされた。加速性のよさと、回転のスムーズさは、メルセデス・ベンツは内燃機関をあきらめていない、とあらためて強く感じさせてくれるものだ。 ディーゼルなのに……というのもなんだけれど、アクセルペダルの踏み込みに対して大変センシブル。ドライブしている私の意思通りの加減速が可能だ。 ステアリングホイールも、これがクロスカントリー型SUVとして定評のあるGクラスなのか! と、驚くほど、中立付近に戻ろうというアライニングトルクが強い。これは個人的にあまり好みではなかったものの、切っていくときのフィールはやはり繊細で、路面の状況がよくわかるのに、Gクラスの新しさを感じた。 パワーがあるだけでなく、サスペンションシステムもステアリングも、バランスよく設定されている。操舵のときの車体のロールは抑えられていて、東京都内の首都高のカーブが連続する区間はそつなくこなし、直線になると、姿勢よく加速に移る。 外部では、全長4680mm、全幅1985mm、1980mmの車体が、鋭い加速を見せるのは、かなりの迫力を感じるはずだ。一方車内は、意外なほど静か。 ボディ各部に手を入れて、燃費に影響する空力性能と、静粛性ともに向上をはかった、と、メルセデス・ベンツではしている。具体的には、Aピラー部の形状最適化、ルーフ前端にリップスポイラーを追加、BピラーおよびCピラーの間やフロアに吸音材を追加、といった内容だ。 今回同時に発売されたメルセデスAMGの「G 63」も大変心地よい乗り心地をもっている。新世代のGクラスは、従来と一線を画した快適性をもっていることが、なにより印象に残った。 ドアはちょっと力を入れて閉めないといけないし、なぜか左ヒンジのままのテールゲート(日本の路上だと使いにくい)など、“改善してほしいけれどそのまま”という点もあるけれど、それがなくなったら、Gクラスらしさが失われてしまうような気がしないでもない。それほど洗練されたクルマになったのだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)