“トヨタ帝国”に死角はないのか? ダイハツ完全子会社化の戦略を読み解く
スズキとの提携もある?
トヨタは2008年のリーマンショックで天狗の鼻をへし折られ、大反省モードに入った。後に考えればこれが現在の改革へとつながっているので「人間万事塞翁が馬」を地で行く話ではあるが、豊田章男社長は会見で今回の完全子会社化のタイミングについて、この混乱の処理に目処が立ったということを挙げている。以前も書いたがトヨタは転んでもただでは起きないどころか、転んだことをばねにして飛躍しようとしている。 今回の記者会見も明らかに戦略的だ。金曜日の夜7時半に会見を開く。その告知は午後4時43分。どう足掻いても夕刊には間に合わないし、テレビのニュースも午後9時からになる。株式市場はとっくに閉まり、影響がでる月曜朝までには、一通りのニュースが出揃ってパニック的な混乱は起こさない。そのタイミングは計画的で、思いつきでやっているわけではない。 少なくともトヨタは、今後世界で大きなパイの争奪戦が激化する状況に向けて仕込みが済んだというわけだ。ダイハツが完全子会社化された以上、もはややろうと思えばスズキとの提携も不可能ではなくなった。そうなればASEANに次いでインドのマーケットも手に入る。スズキはGM、フィアット・クライスラー、フォルクスワーゲンなど自動車業界の巨人となんども提携しながら、離縁してきた“暴れ馬”ではあるが、実力は確かだ。その上、唯一無二のカリスマである鈴木修会長も高齢である。どこまでも独立独歩で行かれるかと言うと、それにも限界はあるだろう。 スズキが再度の提携を決断するとすれば、スズキより規模の大きい提携先はトヨタ、ルノー・日産、現代、フォード、ホンダ、プジョー・シトロエンに限られる。メリットを考えればトヨタとルノー・日産どちらかしかないと思う。もし仮にトヨタがスズキを従えれば、トヨタの世界一は当面揺らがない。 トヨタにとって、ダイハツの完全子会社化は戦略の曖昧な部分を一気に解決する妙手である。というより、極めて順当な正常進化にしか見えない。この問題、まだ国内戦略など、詳細の見えてこない部分が数多く残されている。しばらく注目しながら、分かり次第続報を伝えていきたい。 (池田直渡・モータージャーナル)