マダニに注意 ~ダニ媒介性脳炎に国内初の承認ワクチン~
◇肌の露出なくして
感染を防ぐには、山林などの屋外で活動する時にマダニを体に付けないよう工夫する必要がある。 腕、足、首など肌の露出を少なくする。例えば、首はタオルを巻いたり、ハイネックのシャツを着用したりする。シャツの袖口は軍手や手袋の中に、裾はズボンの中に入れる。 ズボンの裾も靴下をかぶせるか、長靴の中に入れる。服の色味は、明るい色を選ぶとマダニが万が一付いても確認しやすい。仕上げは防虫剤をしっかり付ける。 野外から戻ったら、上着などは家の中に持ち込まないようにする。粘着テープを使って服の上からゴミを取り除くと、マダニも一緒に除去できる。できるだけ早めにシャワーを浴びて、マダニが付着していないかチェックしてほしい。 もしマダニに吸血されていたら、無理に取らない方がいい。医療法人「おひげせんせいのこどもクリニック」(札幌市)米川元晴院長は「マダニの口器が皮膚の内部に残り、化膿(かのう)したり、病原体が飛散したりすることがある。皮膚科などで早めに処置を受けましょう。その後数週間程度、体調の変化に注意して、発熱などの症状が出た場合は医療機関を受診してほしい」と注意を促す。
◇ワクチンで予防
ダニ媒介性脳炎には、以前から旅行者用の不活化ワクチンがあり、渡航者外来などでは輸入して接種が行われていた。海外では1歳で1回目を接種後、定期的に追加接種する国もあるほど一般的な存在だ。 今年3月、国内でもファイザー製のワクチン「タイコバック」が承認され、製造・販売されている。初回に3回接種、3年後に追加接種が推奨されている。米川院長は「不活化ワクチンは時間がたつと効果が薄まる。リスクがある人、感染リスクが高い地域に住む人や移動する人は、継続して打ってほしい」と話す。例えば林業を営む人など、職業上マダニに接する可能性が高い人は、予防の選択肢の一つになりそうだ。 もしかまれて発症しても、検査、診断が難しいのもTBEの問題点だ。「発症し意識がすでに混濁していると、マダニにかまれたことがあったかどうかを聞くこともできなくなる」(児玉医師)。さらに、初期症状が特徴的とは言えず、他の疾患と区別するのが困難で、検査のタイミングを失う可能性が高いことや、病原体の診断が特定の施設でないと行えない。児玉医師は「特効薬などが無く、治療は対症療法しか手だてがない。マダニにかまれるリスクが高い人は、予防の意識を高く持ってほしい」と強調する。(柴崎裕加)