マダニに注意 ~ダニ媒介性脳炎に国内初の承認ワクチン~
山や森だけでなく、民家の裏山や畑、あぜ道などにも生息するマダニ。これからの季節、きのこ採りや紅葉狩りなどで出掛ける人も多いだろう。ウイルスや細菌など病原体を持つマダニにかまれると、さまざまな感染症にかかる恐れがあり、野外活動の際には対策が必要だ。そんな中、ダニ媒介性脳炎の国内初ワクチンが登場。マダニ対策として期待が掛かる。
◇重症化すると致死率高い
ダニ媒介性感染症の一つ「ダニ媒介性脳炎(TBE)」。欧州からアジアまで広く分布しており、TBEウイルスを持つマダニにかまれ、吸血されている間に病原体が移り、感染する。野生のネズミやシカ、イノシシ、アライグマなどをかむことが多い。 マダニは体長2~3ミリと、一般的なダニと比べて大きく、長時間(10日間以上の場合もある)の吸血で大きくなると、ほくろと見間違うことも。 日本でTBEウイルスは「極東亜型ウイルス」が北海道に分布しているとみられ、感染しても70~98%は症状が出ないことが一般的。一部の人に頭痛、発熱、悪心、嘔吐(おうと)などの症状が現れ、重症化すると精神錯乱、昏睡(こんすい)、けいれん、まひなどの脳炎症状にまで発展する。発症者全員が重症化するわけではないが、致死率は20%以上とされ、生存者の30~40%に後遺症が残るなど、重篤な疾患とされている。 2016年に北海道で国内2例目の患者が発生し、亡くなったことから、道内では一部の医療機関で輸入ワクチンの接種が行われていた。18年発生の5例目以降は患者が出ていなかったが、24年夏、6、7例目が相次いで発生。いずれも山菜採りでマダニにかまれたようだ。
◇全国に分布の可能性も
これまでは道内だけで見つかっているが、本当に全国に広まっていないのか。 原因不明の中枢神経系疾患の患者血液を調査した結果、東京、岡山、大分の1都2県で同ウイルスの抗体陽性者が見つかった。また、栃木、富山、島根、長崎の4県で抗体を持つ動物が確認された。 新潟市民病院総合診療内科副部長の児玉文宏医師は「TBEウイルスが全国に広く分布している可能性がある」と警鐘を鳴らす。