奄美大島開闢伝説の地、公園化へ 奄美市笠利町の「アマンデー」
鹿児島県奄美大島の開闢(かいびゃく)祖神として伝わる「アマミコ」の降臨地で「アマンデー(あまみ嶽)」と呼ばれる奄美市笠利町の大刈山(標高約180メートル)で、山頂周辺の公園化が進められている。信仰が根付く近隣の平、節田の両集落会が計画し、市の補助を受けて整備。地元住民や観光客の憩いの場としてPRし地域活性化を図る。 「大奄美史」(昇曙夢著)などにも記述がある開闢神話では、女神アマミコ(阿麻弥姑)と男神シニレク(志仁礼久)の2柱の神が奄美や琉球の島々をつくったとされる。宇検村と大和村にまたがる湯湾岳が降臨地との説もある。 一方、平・節田の両集落に残る伝承によると、アマンデーに降り立ったのはアマミコ1柱。草木もない浮島だった奄美大島に7カ所の立神を打ち込んで止め、自然神を下ろして大島に繁栄をもたらしたとされる。 地元住民らは毎年旧暦5月と9月、山頂の参拝所を訪れ「アマミコさま」を拝む。山の中腹には1901(明治34)年に建てられた石碑もあり、この場所は71(昭和46)年に旧笠利町指定文化財となった。現在は奄美市の指定文化財に登録されている。 地域の信仰の象徴として大切にされてきたアマンデー。近年は観光客も増加していることから、多くの人に親しまれる場所にしようと、地元有志が住民らの賛同を得て公園化を市に提案した。 計画は2024年度「奄美市紡ぐきょらの郷(しま)づくり事業」に採択された。市民が主体となる取り組みを市が一部助成する制度で、今年度は計10件が選ばれた。 工事は20日ごろに開始。参拝所入り口の階段をコンクリートで固めるほか、ベンチの設置、山腹の石碑周辺の舗装なども行う。完成は10月中旬を予定している。 計画の責任者で平集落在住の中村勝郎さん(77)は「昔は浜下れの時期にみんなで弁当を持ってアマンデーに集まった。住民にとっては憩いや礼拝の場所。伝説を継承したい。(公園化が)集落の発展につながれば」と期待した。 「アマミコさま」を代々信仰する同集落の大山幸良さん(95)も整備計画を「ありがたいこと」と喜ぶ。大山さんによると、大刈山の山頂、節田の立神、赤木名の立神の3点を結ぶ三角形の地区一帯が神聖な場所。戦時中は出兵する家族の無事を祈るため、集落のほとんどの人が参拝していたという。 「アマミコさまは昔から本当に慕われていた」と、人々の拠り所となってきた歴史を振り返る大山さん。「足腰が弱くなってしまったが、今年まではなんとかお参りにいきたい」と話した。