アングル:トランプ氏の主な外交方針、NATOやウクライナ問題など
Gram Slattery [25日 ロイター] - トランプ次期米大統領は2期目の外交方針として、北大西洋条約機構(NATO)との関係の抜本的見直しや、ウクライナとロシアの戦争を早期に終わらせることなどを挙げている。 選挙戦では麻薬組織と戦うためにメキシコに軍を派遣する案や、友好国にも敵対国と同様の追加関税を課すことにも言及した。 来年1月20日の大統領就任後にトランプ氏が推進すると約束している主な外交上の提案は次の通り。 ◎NATOとウクライナ、欧州同盟国への対応 トランプ氏は、米国として「NATOの目的と使命」を根本から見直すと宣言。米国がウクライナに供与した武器弾薬の費用「約2000億ドル」の返還を欧州に求めるとともに、追加的なウクライナ支援はしない意向を打ち出している。 1期目後半には米国がNATOに拠出する予算を削減し、しばしば米国の負担が不公平なほど重いと不満を露わにしていた。 ウクライナの戦争については、大統領就任前から収拾に乗り出すと話している。 ただ米国の法律では大統領就任前に外国指導者と交渉することは禁じられており、実際に5日の大統領選以降、この問題で目に見える形での成果はほとんど示していない。 トランプ氏は昨年のロイターのインタビューで、ウクライナは和平合意のために一部の領土割譲が必要になるかもしれないと発言。トランプ氏の顧問2人は今年6月ロイターに、ウクライナがロシアとの和平交渉の席につくことを追加支援の条件とすることで、戦争を終わらせる計画を提示したと明かした。 バンス次期副大統領は、和平合意の一環としてウクライナとロシア双方が現在制圧している地点で戦線を凍結する案を支持する姿勢を示唆している。 トランプ氏は今年4月、ローン形式でウクライナに追加支援を行うことに前向きの姿勢を見せたものの、その後議会で610億ドルの包括的なウクライナ追加策を巡る議論が続いていた間は、この問題でほとんど口を開かなかった。 ◎通商、台湾問題と対中国政策 トランプ氏は中国と一部の欧州同盟国に大幅な追加関税や通商規制を課す考えを再三ちらつかせている。 自らが提案した新たな法令の下では、断固として貿易障壁を設ける国に対して報復関税を発動する幅広い裁量権がトランプ氏に与えられる。同氏が掲げている関税率は中国製品向けが最低50%、その他の国が一律10%だ。 トランプ氏は中国に対する最恵国待遇適用を打ち切り、米国内の重要インフラを中国が所有することに新たな厳しい規制を設定すると約束。与党となる共和党の正式な綱領には、中国人による米国不動産所有を禁止する方針が盛り込まれた。 トランプ氏は台湾には、米国による防衛の対価を支払うべきだと明言し、台湾が米国の半導体事業を「ほぼ100%」奪ったのに、何も米国に与えていないと訴えた。また自身の任期中に中国が台湾に侵攻することは決してないと繰り返している。 ◎メキシコと麻薬 トランプ氏は、メキシコの麻薬組織を外国のテロ組織に指定し、国防総省に対して麻薬組織の指導者とインフラを攻撃するための「特殊部隊を適切に使用する」よう命令すると表明している。そうした行動は、メキシコ政府に不快感を与える公算が大きい。 さらにトランプ氏は、麻薬組織封鎖に海軍を投入し、敵性外国人法を根拠に米国内の麻薬ディーラーやギャングのメンバーを強制送還する考えも示した。 敵性外国人法は、戦時に大統領が外国人を送還できる権限をある程度認めている。 共和党綱領では、不法移民対策として米国とメキシコの国境に海外派兵用の軍部隊を投入することも求めている。 ◎中東紛争 トランプ氏は、パレスチナ自治区ガザでイスラエルと戦闘を続けているイスラム組織ハマスについて「壊滅」させるべきだと述べている。 ただトランプ氏は、ハマスなど米政府がテロ組織に指定するグループと緊密な関係にあるイランに対してより厳しい態度を取ると言ったほかには、中東地域の紛争解決に向けた具体策はほとんど提示していない。 トランプ氏は、米国に永住権を持つ外国人のうち「ハマスのシンパ」は全て強制送還する意向だ。 ◎気候変動 トランプ氏は、気候変動の国際的な取り組み合意であるパリ協定からの再離脱を繰り返し約束している。米国は第1次トランプ政権下でパリ協定を離脱した後、バイデン政権になって2021年に復帰した。 ◎ミサイル防衛 トランプ氏は、米国全体をカバーする最新式のミサイル防衛網構築を提唱。今のところ宇宙軍が主役になるという以外、詳しい内容は明らかにしていない。 ◎第3次世界大戦 トランプ氏は、自身が選挙に勝利しなければ第3次世界大戦が起きると警告し、選挙戦終盤ではこれが演説内容の中心になった。9月初めには「私は数多くの予測をしてきたが、われわれが第三次世界大戦の領域に突入しようとしているという事態はあまりにもひどいので、そんなことは予測したくない」と語っていた。 これに関してトランプ氏はしばしば、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの戦闘、中国と台湾の緊張持続などに言及している。